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第175話
ショッピングモールへ着くと、休日のためかそこそこ賑わっていた。
昼過ぎで小腹も空いていたため、ショッピングモール内の飲食店を探す。
久々にピザでも食べたいと意見が一致し、イタリアンの店に入った。
「何買おうかな〜。この腕時計に合う細身のブレスレットでもいいですし、あとはお揃いのパジャマとかでもいいですよ?」
注文した食事を待っている間、城崎がいろんな提案をしてくれる。
城崎とお揃いのパジャマ…、いいかも…。
でもお互い家でしか着ないとなると、あんまりお揃いの実感も湧かなさそうな気もするし…。
うーん…と悩んでいると、城崎が何か思い付いたように声をあげた。
「先輩、ボールペンとかどうですか?ちょっと良いやつ。色違いだったら会社でも持ちやすくないですか?」
「いい…っ!」
「名案でしょ?俺天才かもしれないです。」
ピザを食べてモール内に併設されている百貨店の紳士服売り場へ向かう。
そこには目当てのボールペンもいくつかショーケースに並べてあった。
「先輩、これは?」
「あ、それ書きやすいよな。いいかも。」
「こっちも落ち着いたデザインで良いですね。」
「本当だ。うーん…、悩むな。城崎はどっちがいい?」
サラリーマンなら知っている少し値が張るボールペン。
ボールペンの割には高いので、簡単にこれにしようと購入するのも気が引ける。
ショーケースの前で唸 っていると、店員がショーケースからボールペンを出して試し書きをさせてくれた。
「城崎、こっちのが書きやすいかも。」
「じゃあそっちにしましょうか。」
「うん、待ってて。俺買ってくるから。」
「やだ。先輩のは俺が買います。」
断ったが城崎は折れず、結局お互いに購入しプレゼント用に包んでもらう。
城崎は黒、俺はプラム。
明日から使うのが楽しみだ。
店を出て包まれた箱を交換し合う。
「城崎、ありがとう。」
「こちらこそ。先輩、ありがとうございます。」
包装紙に包まれたものって、中身がわかっててもなんかドキドキする。
城崎にもらった小包 を大切に鞄にしまった。
「先輩、他に見たいとこありますか?」
「ん〜…。あ、カーテン。」
「そういえば先輩、二ヶ月くらいカーテンないままでしたね。」
「おまえが捨てたんだろうが。」
城崎による大掃除の結果捨てられた俺ん家のカーテン。
面倒でまだ買っていなかったことを、ふと思い出す。
インテリアショップのカーテンコーナーに着くと、城崎は嬉しそうにカーテンを選んでいた。
「先輩の部屋ならこの色が合いますね。どうですか?」
「ん。合うと思う。それでいいよ。」
「適当ですね…。」
「俺より城崎のがセンスあるだろ。任せる。」
「そうやって伊藤さんにも任せたから、俺にバレて捨てられるんですよ。」
その通りだと思う。
俺は自分のセンスは人より劣ってると自負しているし、特にこだわりもない。
だから過去の俺も千紗に任せっきりで、千紗のセンスと趣味に染まった部屋になったわけだ。
「じゃあ、これ買ってきますね。」
「いいよ、俺が買う。」
「俺が捨てたんで俺が買いますよ。」
また会計の取り合いになり、結局ここは折れるわけにはいかず自分で払った。
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