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第191話
バスを降りると紫陽花 が咲いていた。
この時期に紫陽花が見れるだなんて、何だか不思議な感じだ。
「梅雨じゃなくても紫陽花って咲いてるんですね。」
「あぁ、でもなんか普通のとちょっと違うな。」
普通の紫陽花も幾 つか咲いているけど、殆 どが小さめの普段見るのとは違う紫陽花だ。
近くで見ていると、庭師の人が寄ってきて教えてくれた。
「これは玉紫陽花って言うんだよ。7月から9月くらいにかけて開花するんだ。普通の紫陽花はもう時期が過ぎてるからね。どう頑張っても量が少なくて。」
「へぇ…、そうなんですね。」
紫陽花の区画は日陰になっていて暗い。
でもその雰囲気が紫陽花の良さを引き立てている。
静かな空間で居心地が良い。
「あ。見て、先輩。あそこに鳥居がある。」
「え?ほんとだ。神社かな?」
「行ってみましょう。」
城崎と一緒に行くと、小さめではあるが神様が祀 られていた。
これが例の映えスポットってやつなのか?
女の子が何組か写真を撮っているし、一眼レフを持ったカメラマンっぽい人も紫陽花と神社を撮影している。
前ひまわり畑に行って感じたが、カメラマンと若い女の子相性が悪すぎる。
カメラマンは風景画を撮りたいから女の子がたくさんいると少し邪魔なんじゃないかと、何となくそんなことを思ってしまった。
「なんか祈ります?」
「ん〜、まぁ軽く。」
「軽くって何ですか(笑)」
「今回の旅行、何事もなく回れますようにって。」
「いいですね。雨とか降りませんように。」
御賽銭 を投げて二人で手を合わせた。
まぁこれで雨は降らないだろう。
てか、城崎絶対晴れ男だしな。そんな顔してる。
「先輩、次あっち行きませんか?」
「うん。」
坂を降りていくと、海沿いの区画に入った。
さっきとは違い、日当たりが良くて、ハイビスカスがたくさん咲いていた。
「めちゃくちゃ夏っぽいな、ここ。」
「ですね。」
小さめではあるがビーチがあり、子どもたちが遊べるようになっている。
というか、ここも若い子が多いし、なんなら水着になっている子もいた。
「パリピですね。」
「パリピ……。つってもお前くらいの年齢じゃないか?」
「やめてくださいよ。もっと若いでしょ……、多分。」
城崎は同じ括 りにされたくないのか、苦虫を潰したような顔でそう言った。
それを見て笑うと、城崎は「もう…」と少し拗ねてしまった。
「可愛い。」
「嬉しくないです。」
「あ、ジュース売ってんじゃん。買ってくる。」
視界に入った小さなジューサーバーを見て話を逸らす。
話を逸らすために行ったけど、思いの外 どれも美味しそうで何にするか悩んだ。
「これとこれ、ください。」
「承りました〜♡」
アロハシャツを着た若い女の子にジュースを手渡される。
俺に甘ったるい対応をしてくるくらいだから、城崎だったらもっとヤバかっただろうな。俺一人で買いに来てよかった。
ハイビスカスを添えたグラデーションぽくなってるソーダと、同じくハイビスカスを添えたミックスジュースを持って、城崎の元へ戻った。
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