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第193話
次に着いたのはひまわり畑だった。
いろんな植物を育てている場所だから、前のひまわり畑と比較してしまうと数や感動は劣るが、やっぱり向日葵は見ているだけで元気が出る。
「綺麗ですね。」
「本当にな。あ、城崎見て、白い向日葵もある!」
振り返ると、城崎は向日葵じゃなくてじっと俺を見つめていた。
「な、何…?なんか付いてるか?」
「いえ。」
「じゃあ何?」
「向日葵に隠れてキスしたの、思い出しちゃって…。」
「はぁっ!?」
「また…、します?」
城崎の親指が俺の唇を撫でた。
恥ずかしくて顔が熱くなるが、城崎はそんな俺を見てくすくす嬉しそうに笑っていた。
俺の反応見て遊んでるな、これは。
キスとか、そりゃしたいに決まってる。
でもこんなに人が多いとこでできるわけねぇじゃん…。
「夜………、いっぱいして……。」
「っ……!」
羞恥で顔を上げられなくて、城崎の服の裾を掴んでそう伝えた。
それが今の俺の精一杯。
「先輩、煽るの上手すぎません…?」
「………??」
「無自覚だから余計タチ悪いですよ…。」
城崎は俺の手を握り、苦笑しながらそう言った。
思いっきり旅行を楽しみたい気持ちと、早く旅館に行って城崎といっぱいキスしたい気持ちが半々だ。
城崎のせいで少しムラムラしてしまったから、気分を切り替えるためにひまわり畑の真ん中まで走って深呼吸した。
「せんぱーい!そろそろ次行きましょう!」
「わかったー!すぐ行くー!」
畑の外から城崎が俺を呼んだ。
大きな声で叫んだから視線が集まり、また城崎に人が集 りそうだ。
「城崎、逃げるぞ!」
「えっ?」
俺を待つ城崎の手を引き、近寄ってきていた女の子たちの集団を避けて走った。
なんか大人になって誰かと手を繋いで走るなんて思わなかったな。
子供の頃に戻ったみたいだ。
「先輩っ、どこまで走るんですかっ…?!」
「あ、あぁ。もういいや。疲れた〜!」
息を整えて辺りを見渡すと、木に囲まれた小道にたどり着いていた。
蝉が耳痛くなるくらい鳴いてて五月蝿 い。
手でパタパタと扇いでいると、もう片方の手を城崎がギュッと握った。
「どうした?」
「無理……」
「何が?」
「俺、蝉とゴキブリだけは本当無理なんです……」
城崎の顔は青褪 め、体を縮こませて震えながら、潤んだ瞳で俺を見つめていた。
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