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第199話

助手席に乗り込み、シートベルトをする。 今日はもう宿に戻って、美味い飯を食って、温泉に入って寝るだけ。 まぁそりゃ、二人きりの夜だし、それだけじゃないに決まってるんだけど。 「先輩…」 「ん?」 「誰もいないから、ちょっとだけ…」 「あっ…、城崎ッ…、んっ……♡」 城崎が運転席について、エンジンをかける前に俺にキスをしてきた。 もう外は暗いし、駐車場には俺たちの車だけ。 少しくらいいいかなって、俺も城崎のキスに応える。 「んっぁ…♡……チュ……チュクッ……」 唾液が絡み合っていやらしい音が車内に響く。 満足したのか城崎の唇はリップ音を立てて離れていった。 恥ずかしくて顔が真っ赤な俺に対し、城崎はご機嫌に鼻歌まで口ずさみながらエンジンをかけて車を出発させた。 「どれくらいで着くんだ…?」 「んー、数十分ですかね。楽しみですね。」 「うん。」 「早く二人きりになりたいです。」 「先に飯だからな…?」 城崎のことだから部屋に着くなり襲ってきそうだ。 夕食のコース料理も楽しみにしてるから、それ食べ終わるまでは我慢して欲しい。 でも夕食の前にシャワー浴びて着替えたい気もするし、そんなことしたら城崎のスイッチ入りそうで迷うな…。 「城崎、いっぱい時間あるから、な?」 「はい?」 「えっちは…、その……、夜でもできるから……。」 「そうですね。」 「だから夕食の後までは我慢しろよ?」 念押しすると、城崎は「自信ないな〜」と冗談混じりに苦笑した。 疲れてうとうとしていると、車が止まった。 「先輩、着きましたよ。」 「…ぇ……?」 「疲れてたんですね。」 「わ、悪い!城崎の方が疲れてんのに…」 「大丈夫ですよ。夜寝れない分、今は許します。」 慌てて起きると、城崎は俺の額にキスをして先に車を降りた。 さっきのって、そういう意味だよな…? ブワッと顔に熱が集中し、ぱたぱたと手で顔を煽ぐ。 俺もすぐに助手席から降り、トランクから必要な荷物を出す城崎を手伝った。 「城崎のが疲れてるんだから、寝ちゃうんじゃないか…?」 「俺が先輩との時間をみすみす逃すとでも思いますか?」 「俺だってそんなつもりなかったけど、いつの間にか寝てたんだよ。」 「今夜は寝かせてあげるつもりないですからね?」 ニヤニヤと意地悪く微笑む城崎。 恥ずかしくて城崎を押し退けて旅館の方へ早歩きで向かった。

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