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第202話
イッた後疲れて脱力した俺を、城崎は風呂に運んだ。
檜 で作られた小さな木製の露天風呂に男二人で浸かる。
俺はされるがままに城崎の上に座らされていた。
「気持ちいいですね。」
「うん……。はぁ…、生き返る……。」
「明日は本館の貸切風呂入りませんか?」
「いいよ。」
旅の疲れと射精した気怠さ、いろんなものが一気に押し寄せてウトウトと船を漕いでいると、城崎に乳首を摘まれる。
驚いて振り返ると、城崎は少しムッとした顔をしていた。
「何すんだよ。」
「寝かさないって言ったでしょ。」
「だって……」
「あー、失敗した。先輩はイッたらすぐバテちゃいますもんね。さっき出すべきじゃなかったなぁ…。」
城崎はため息をついて、俺を抱きしめながら首筋に顔を埋めた。
そんなこと言うが、城崎が絶倫なだけで射精したら賢者タイムがくるじゃん、普通。
「分かんないかなぁ…。」
「分かんないことはないですよ。ただ俺の判断ミスです。」
「それってなんか俺が体力ないおっさんって言われてるみたいでなんか嫌だ。」
「そんなこと言ってないでしょ…。まぁ、先輩にもっと持続力があればなって思うときはありますけど。」
城崎は文句垂れながらも俺の首に何度も吸い付いている。
鏡見るのが怖い。
「城崎、見えないとこにしろよ?」
「普段から俺のだって言いふらしたいの、必死に我慢してるんですよ。今日は許してください…。」
歴代の彼女はここまで独占欲が強い子はいなかったから、キスマークを付けられるのはなんだか新鮮だ。
城崎のマーキングタイムが終了し、城崎は頭と体を洗いにシャワー室へ向かった。
一人になって、狭いはずの風呂が少し広く感じた。
ルーフデッキから続く中庭は水盤 が広がっており、月や木を美しく反射する。
今日は綺麗な満月で、月明かりが大理石に反射してとても綺麗だ。
シャワーを終えた城崎はこちらに戻ってきて風呂の縁に腰掛ける。
「月明かりに照らされてる先輩、すげぇ綺麗。」
「何言ってんだ。そんな儚くねぇだろ、俺。」
「俺にはそういう風に映ってるんです。」
城崎は夜空を見上げた。
「今夜は、月が綺麗ですね。」
城崎が言った言葉、これってたしか……。
「おまえと見る月だからだろうな。」
城崎の目を見てそう返した。
その目は嬉しそうに弧 を描き、それが堪らなく愛おしいと思った。
どちらからともなく合わせた唇は、深く深く重なり溶け合った。
『月が綺麗ですね。』
ある文豪が訳した愛の告白。
やっぱり城崎はロマンチストなところがあるなと、少し笑いそうになった。
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