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第214話
カーテン越しに部屋に差す朝の光に目を覚ました。
やっちまった……と、心の底から反省する。
俺はイッた後の記憶がないから、おそらくそこで気失ったか寝落ちした。
あの時城崎はまだイッてなかったし、意識飛んだ俺にセックスを続けるほど非情な奴じゃない。
つまり城崎は昂 ったまま放置されたわけで、しかもぐちゃぐちゃにしたベッドのシーツは綺麗に変えられ、なんなら俺の部屋着まで新しいものに変わってる。
城崎がゆっくり寝られるようにと思っていたのにこの有様だ。
今すぐ昨日に戻って欲望に負けるなと俺を叱 りたい。
「ごめんな…、城崎………。」
いつもなら俺より早く目を覚ましてるのに、今日は俺が起きてなお、ぐっすりと眠っている。
そりゃそうだ。
旅行初日も早起きで、日中は丸一日運転、旅館での夜もほぼ寝ていないし、昨日も夜まで運転してくれていた。
せめて午前中いっぱいは寝かせてやろう。
明後日から仕事が始まるから、昼夜逆転しても困るし、あんまり寝かせるわけにもいかないけど。
「ん……、先輩……」
「寝てていいよ。」
「先輩も……」
起きようかと上体を起こしていたが、城崎に強請 られて布団の中に潜る。
二度寝するの久しぶりだな…。
まぁ、たまにはこういう日があってもいいか。
「好き……、先輩、好き…」
「俺も大好きだよ。」
胸元に擦り寄ってくる城崎を迎え入れ、よしよしと頭を撫でる。
セットしてない柔らかい城崎の髪の触り心地を知ってるのも、俺だけだと思うとなんだか嬉しい。
完全なオフモードの城崎は年相応の可愛い年下彼氏なのだ。
城崎の髪に顔を埋めると、俺と同じシャンプーの匂いがした。
この感覚にもやっと慣れてきたけど、嬉しいことには変わりない。
「はぁ〜……。俺、こんな幸せでいいのかな……?」
仕事も順風満帆 で、支えてくれる恋人がいて、三大欲求どころかそれ以上も満たされてる。
一体誰だよ、男と恋愛なんか考えられないって思ってた奴……。
今や普通にイクことなんか忘れて、ドライオーガズムとかいうのを覚えてしまった俺の体。
普通の男女のセックスに戻れる気がしない……、というか別に戻る予定もないけど。
でももし城崎と別れることになったら、普通に女性と結婚すると思う。元々恋愛対象は女だし、城崎以外の男なんて考えられないから。
旅先であんな格好つけといてなんだけど、城崎と別れるなんて、考えたくねぇな……。
「ずっとそばに居ろよ……?」
「……………」
「城崎、愛してる………」
眠る城崎の瞼にキスをして、俺も再び夢の中へ落ちていった。
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