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第215話
お盆が終わり、火曜日。
職場に行くと、皆んな休み明けで仕事したくないって分かりやすい表情をしていた。
「おはよー、望月くん。」
「おはようございます。あ、これ。お土産よかったら。」
「わー!伊豆行ったんだ?お盆だし、混んでたでしょ?」
「まぁ…」
城崎と行ったことは内緒だが、城崎と俺の折半で買ったお土産の一つ。
職場の分は先輩の俺に花を持たせようと譲ってくれた。
まぁ別に旅行に行ったことを公表しなければ、誰にも催促などされないのだが。
「誰と行ったの?あ、まさか恋人〜?」
「えー!知りたい知りたい!望月さんって、どんな方が好みなんですか?やっぱり伊藤さんみたいな子ですか?」
「あんたデリカシーってもんがないの?!普通ここで元カノの名前だす?!」
「あ、すみませんっ…!」
キャイキャイ騒ぐ同僚はさておき、俺はデスクに着いた。
デスクには旅行先で作ったハーバリウムを飾る。
ハーバリウムを見てニコニコしていると、涼真が椅子を寄せてニヤニヤした顔で耳打ちしてくる。
「どうだったんだよ?城崎との伊豆旅行っ!」
「どうだったって……。楽しかったよ、すごく。」
「それも?お土産?」
「うん。一緒に作ったんだ。」
「おー、それでそれで?夜は?」
「まぁ、ご想像にお任せします…。」
「んだよ、それ〜。」
「教えるようなことでもねーだろ。」
俺の返答で大方想像がつくのに、それ以上を求めるなんて思春期かよ。
そもそも夜のこと聞いてくる時点で中学生かよ。
「あ、そういえば来週末、俺の家で涼真の誕生日会しようぜ。」
「いいの?」
「城崎も誘ってくれるなら許すって。」
「ほら、言っただろ?2人はダメだって。」
「はいはい。涼真の言う通りでした。」
ドヤ顔する涼真を適当にあしらっていると、トントンっと肩を叩かれた。
「おはようございます、先輩。」
「うわっ?!お、おはよう、城崎…。」
ニコッと笑って俺にだけ挨拶をする。
デスクに向かいながら皆に挨拶しているが、唯一挨拶されなかった涼真はちょっと不機嫌だ。
「何だよ、あいつ!本当愛想ねぇな。」
「ははは…。」
「俺の方が綾人と仲良い歴長いんだから、話してて当たり前だろ?はっ、ちっせぇ男だなぁ。」
直接言えばいいのに…、なんて思う反面、そんなこと城崎に言ったら俺にもとばっちりがきそうで嫌だ。
しかも涼真の誕生日会するのに、2人に仲悪くなられたらたまったもんじゃない。
「まぁまぁ。涼真だって彼女が他の男と仲良さそうにしてたらムッとすることくらいあるだろ?」
「いや、同性と話してても何とも思わねぇよ、さすがに。」
「俺と城崎の場合はイレギュラーだろ。同性だから嫌なことだってあんだろ。」
「ふーん。綾人は城崎の肩持つんだ?」
「そういうわけじゃねぇよ。子どもか。」
涼真はしばらくいじけたが、城崎とのランチを断って涼真に付き合ってやると、割とすぐ機嫌は治った。
そのあと次は城崎が駄々こねて、結局仕事終わりうちに来ることになった。
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