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第218話

「先輩、太りますよ?」 「大丈夫。俺あんま太んないから。」 恥ずかしいと隠れるようにしていた俺は、いつのまにかお祭りの雰囲気に呑まれていつも通り祭りを楽しんでいる。 右手にはりんご飴、左手にはわたあめ、そして城崎にはたい焼きとベビーカステラを持たせている。 「よくこんなにもいっぱい甘いもの食べられますね…。」 「美味しいもん。城崎もいる?あーん。」 「………甘。」 城崎は甘いものそんな得意じゃないくせに、俺が差し出したら迷わずに口を開ける。 射的とか金魚すくいとか、お祭りっぽい(もよお)しはたくさんあるけど、俺は屋台で甘いものを買うので満足してしまう。 両手いっぱいの甘いものを食べ終えた頃、花火大会開始前のアナウンスが鳴った。 「城崎、なんかしたかった?」 「いえ。強いて言うなら、焼きそばとか甘いもの以外食べたいですけど。」 「ん〜。でも混んでるからなぁ…。もう花火始まっちまうし。」 「そうですね、行きましょうか。」 「え、どこ行くんだよ?!」 「花火がよく見えるとこ。」 城崎は俺の手を引いて林の方へ向かう。 花火大会の会場と方向が違うんだけど。 林というか、山というか、坂道を登っていくと、虫の()と俺たちの足音しか聞こえないような、人気(ひとけ)のない高台にたどり着き、城崎は足を止めた。 「先輩、俺さっき、甘いもの以外食べたいって言ったんですけど、やっぱり訂正。」 「へ?」 「俺、一つだけ大好きな甘いものあるんです。」 「えっ?……んっ、んんっ……!?」 城崎は振り返って、俺の唇にむしゃぶりついた。 大好きな甘いものって、俺かよ?! 俺、そんな甘くないし!そもそも食いもんじゃねえ! 「し…ぁ、しろ…さっ…きぃ……」 「今日の先輩、幼くて可愛いです。」 「ん…ゃぁっ…、ん…んふ……っ」 「ん……、先輩、可愛い……、チュ…」 気持ちよくなって徐々に体の力が抜けていき、膝折れしそうなところを城崎に支えられる。 俺も城崎の首に手を回して、脚に力を入れてみたけど、すぐにまた力が抜けてしまった。 「ば、バカっ!何して…ッ?!」 「脱がせてますけど。」 「脱がせてますけど……、じゃねーよ!!人来たらどうすんだよ?!」 「こんな獣道(けものみち)誰も通ってきませんって。」 「だからって、ここ外だぞ?!…ぅあっ…!」 城崎は甚兵衛の紐を解き、首筋にジュッと吸い付いた。 痕が残るくらい、強烈に。 「城崎っ!本当に駄目…、ぁっ…」 城崎の顔が移動して、次は鎖骨に吸い付かれる。 また下に降りていき、次は胸元に、お腹に。 そして城崎は俺の眼前に戻ってきて、唇を合わせながら俺の肩から甚兵衛を地面に落とした。 「城崎っ…、城崎、駄目っ…!」 「先輩、何が駄目なんですか?そんな欲情した顔して、俺のこと説得できるとでも思ってるんですか?」 「ぁっ…あぁっ…!」 花火大会が始まり、大きな花火が真っ暗な空に咲き誇った。 花火の光で城崎の表情が俺の瞳に映り、その欲情した城崎の瞳には、欲情した俺の顔もはっきりと映っていた。

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