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第223話
許してくれたのかと、俺は城崎を追いかけてリビングに向かう。
仲直りのチュー、と思いきや、城崎は俺の方に一切振り返らず、ソファに座りテレビをつけた。
「城崎…?」
「なんですか?」
「まだ怒ってる…?」
恐る恐る城崎の顔を覗き込む。
ニコニコしているが、完全な作り笑い。
相当怒らせてしまったらしい。
「仲直り……しない?」
「いや、怒ってませんけど。」
「じゃあキスして…。」
「先輩が触るなって言ったんで。」
ツーンとした城崎の態度。
こっちは謝ったってのに。
元はと言えば悪いのは城崎じゃねぇの?
「あぁそうですか。じゃあいい。城崎の希望通りテレビでも見るか。」
「そうですね。」
「謝っても許してやんねぇからな。」
「何を謝るんですか?俺は先輩に体目的だとか勘違いされてるみたいなので、誠意見せてるだけですけど。」
「だからその態度がさぁ!!」
「先輩から触ってってお願いするなら、たくさん触れてあげます。それはそれはもう優しく丁寧に。」
「絶対言わねー。」
俺はあえて城崎から一人分空間をあけて隣に座った。
城崎が俺のこと大事にしてくれてるのは知ってるし、今更体目的だとか思ってねぇけど。
あれは言葉の綾っていうか…。
思ってないのに、つい口からぽろっと出てしまっただけというか。
だから謝ったのに、そんな怒んなくてもいいじゃんか…。
しかも結局、俺の天邪鬼 な性格が喧嘩を拗 らせたというか。
「はぁ……。」
「先輩、なにため息ついてるんですか。お昼、何食べたい?」
「え?作ってくれんの…?」
「はい。何か食べたいのありますか?」
城崎は態度はいつもよりよそよそしいものの、触らないってこと以外は普通に接してくれるようだ。
いきなり聞かれたから思いつかなくて、パッと思いついた食べたいものを口に出す。
「んっと、じゃあ、パンケーキ!」
「…………」
「う、嘘だよ…。んーっと、えっと…、ビビンバとか?」
「わかりました。」
城崎は「買い物行ってきます。」とマンションを出た。
リビングに取り残された俺はすることもなく、テレビもさして興味を引くような内容がないのでゲームを始めた。
30分ほどして城崎が帰ってきて、すぐにキッチンで調理が始まる。
「いい匂い…」
「もう少し待っててくださいね。あとちょっとでできますから。」
「はぁい。」
俺はダイニングに座り、ほどなくして城崎が丼を二つ持って席に着いた。
「いただきます。」
口いっぱいにビビンバを頬張る。
相変わらず城崎の料理はめちゃくちゃ美味い。
「美味い。」
「よかった。夜は餃子にしますね。」
「うわ、最高…。」
「先輩も手伝ってくれますか?」
「おう。」
よかった。普通に会話できてる。
さっきまでの気まずい雰囲気が嘘みたいで、俺はホッと胸を撫で下ろした。
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