224 / 1069
第224話
お腹が満たされ、うつらうつらしている間、城崎はさっきまで俺がやっていた格ゲーで遊んでいた。
最初は操作方法も分からなかったくせに、付き合って俺の家に度々 来るようになってから、メキメキ上達している。
別に来る度にやってるわけではないはずなんだけどな…。
今やったら俺が負けそう。
「先輩、眠い?」
「ん…、ちょっと。」
「ふふっ、可愛い。」
いつもなら俺の頬をつまんだり、頭を撫でてくれたりするけど、もちろん今日はそんなこともしてくれない。
触ってくれればいいのに…。
そんなこと思いながら、俺はそのまま眠った。
ちょうど小腹が空いてきた時間に、甘い匂いがして目を覚ます。
キッチンの方で城崎がなんかしてる。
まだ時間は15時だし、餃子作るには早すぎるしな。
そもそも明らかに餃子の匂いではないけど。
「あ、先輩、起きました?」
「ん……」
「丁度できましたよ。はい、どうぞ。」
「えっ!嘘?マジで??」
城崎の手にはお皿に綺麗に盛り付けられたパンケーキ。
たっぷりのホイップクリームにフルーツなんかも盛ったりして、ストロベリーソースがかかってる。
お店顔負けの本格的なパンケーキ。
「いただきます!………美味っ!!」
「よかった。お菓子はあまり作ったことないので、不安だったんですけど…。」
「めちゃくちゃ美味い!店出せるぞ!」
ふわふわで甘くて美味しい。
それにホイップも重くなくて、多くても全然食べられる。
「何で?」
「先輩がお昼食べたいって言ってたでしょ?」
「だって城崎、俺のことジト目で見てたじゃん。」
「お昼ごはん聞いたのにパンケーキって言うからでしょ。でも食べたいから出てきたのかなって思うと、作ってあげたくなって。」
「マジ天才…。今まで食ったパンケーキで一番美味い。」
「お世辞が上手ですね。また作りますね。」
お世辞なんかじゃないんだけどな。
城崎にも食べてみろと勧めたが、「いいです。」と断られたから俺が綺麗に完食した。
おかげで目が覚めて、そのあと一緒にゲームしたり、DVDを見たりしてのんびり過ごす。
夕食どきが近づいてきたら、二人で餃子を作って、ホットプレート準備して焼いて。
ほとんどいつもと変わらない休日。
唯一違うのは、城崎が触ってくれないってことだけ。
「ビール飲まない?」
「駄目ですよ、先輩すぐ酔っちゃうでしょ。」
「だって餃子だぜ?飲もうよ。」
「仕方ないな…。先輩は一本だけですよ?」
俺は冷蔵庫からビールを二本取り出してテーブルに置く。
プシッ…とタブを引いて一気に飲み干した。
「先輩、そんな一気に飲んじゃ駄目ですよ!」
「いいんだよ…っ」
「もう真っ赤じゃないですか…。」
城崎は呆れたように俺を見た。
だって、お酒の力を借りないと素直になれる気がしないんだもん。
夕食が餃子って聞いた時からこの手段に出ることは決めていた。
俺はこんな捻くれた性格だから、素面だと甘えるのも下手くそだし…。
「城崎……」
「何ですか?」
「チュー、して……」
「もう酔ったんですか?まだご飯中でしょ?」
「ベッド行こ…?」
「駄目です。ちょ…、先輩っ?!」
全然誘いに乗ってくれない城崎に気持ちが焦って、俺はテーブルの下に潜り込んだ。
ともだちにシェアしよう!