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第244話

「嘘でも先輩が柳津さんと宅飲みしてるなんて聞きたくなかったなぁ。」 「はぁ?宅飲みくらいするっての。俺と綾人の仲舐めんなよ?」 「俺と先輩なんて、柳津さんと先輩の関係よりももーっと深くて甘い関係なんですからね!」 「恋人と親友を一緒くたにすんな、馬鹿野郎!」 「ちょ、おまえらボリューム抑えて?!というか、職場でそういう話すんなよ!!」 ただでさえちゅんちゅんに勘繰(かんぐ)られてバレそうだってのに、平然と"恋人“やら"甘い関係"やら爆弾発言をする馬鹿二人。 さっき守ってくれたのは何だったの?と聞きたくなる。 「先輩、今日の夜ご飯何にします?」 「あ、話逸らしたな?」 「柳津さんと言い合ってるより、先輩と話した方が有意義な時間を過ごせることに気がつきました♡」 「おまえなぁ……」 これは冗談抜きでバレるのは時間の問題な気がしてきた。 幸いにも周りは、いつも通り城崎が俺に懐いてるな程度にしか思っていないようだが…。 「職場では控えろ。」 「はーい……。」 「………夜は親子丼食いたい。」 「はいっ!」 叱ると露骨に拗ねてしまった城崎がなんだか可哀想に見えて夕食の希望を伝えると、途端に嬉しそうな声で返事して仕事に戻っていった。 パソコンに向き合い資料を作っていると、隣のデスクから涼真が俺に話しかける。 「夕食ってなんの話?」 「あぁ…。今、城崎が一週間うちで暮らしてんだよ。」 「えっ?!はぁ?!同棲?!!」 「ちょっ…!?声デケェよ!!」 涼真が驚いてデカい声を出した。 さすがにこれは皆んなにも聞こえたようで、俺は格好の餌食となった。 「なになになに?!望月くん同棲してるの?!」 「えー!彼女?!ついに千紗ちゃんに次ぐ彼女ができちゃったの〜?!」 「いやぁ〜、望月くんにもやっと春が来たかぁ〜!陰ながら応援してたんだよぉ!」 主に女性の先輩方。 そして独身もしくはフリーの男性陣からは嫉妬の眼差しがビシバシと飛んでくる。 既に結婚して奥さんがいる上司からは、聖母のような眼差しが…。 「裏切り者〜〜!!!」 「スペック高いくせして彼女いないから安心してたのに!!」 「今日は飲みだ!!全部聞かせろ!!!」 あぁ……。涼真の馬鹿野郎……。 さっきのフォロー、全部水の泡だよ。 むしろマイナスだよ。 「いや、違いますって。俺彼女なんか……」 「逃げようったって無駄だぞ!!全部吐け!!」 「私も望月さんの恋バナ聞きたいですぅ〜!」 同僚男性陣、さらには先輩女性陣に加え、後輩女子も参加し、今夜は急遽飲み会がセッティングされてしまった。 城崎お手製の親子丼食べたかったのに…。 というか、話せるわけねぇじゃん。 相手はうちのスーパーイケメン、城崎なんだから。 「定時で終わらすぞ!!」 「「「おーー!!!」」」 こういうときの営業部の団結力は凄いもんで、全員定時に仕事を終わらせ、俺は引きずられるように居酒屋に連行された。

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