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第245話
18時には店に入り、あっという間に2時間が経過した。
俺はベロベロの上司に囲まれ、根掘り葉掘りと存在しない彼女の話を聞き出されている。
「だから本当にいないんですってば!」
「いーや、いるね。前からなんとなーく思ってたんだよ、最近の望月はエロいって。でもなんもボロ出さないから、俺の勘違いかなぁと思ってたんだよ。」
「それもこれも柳津のおかげだよな。同棲ってこいつが言ったんだろ〜?望月も薄情な奴だよなぁ。俺たちに内緒で同棲に至るまでの関係に進んでるなんて。」
「ていうか、望月も飲めや!!俺らこんなに飲んでんのに部下のお前が飲まなくてどうすんだよ!」
パワハラだ…。
目の前に置いてあった烏龍茶が回収され、代わりに瓶ビールが置かれる。
グラス一杯でほろ酔いになれるくらいなのに、こんなに飲めるわけないじゃん…。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいって!綾人はお酒強くないですし、明日も仕事ですし。俺がまた聞いとくんで、今日はお開きにしませんか?」
「はぁ〜?!弱いの知ってるから飲ませんだろうが!」
「こいつの口から聞くまでは帰れねぇ!帰さねぇ!」
涼真がヘルプを出してくれたが、周りは納得せず、俺が酔って口を滑らすまで本当に帰る気はなさそうだ。
飲まなきゃ帰れない……。
「おぉっ!望月いくか!」
「よっしゃー!一気!一気!」
同僚たちのコールが始まり、俺は瓶ビールを掴んで立ち上がった。
ゴクゴクと喉を鳴らしながら、ビールが体の中へ流れていく。
「馬鹿なんですか?!もう駄目です!!」
半分くらい飲んだところでビールを取り上げられ、俺は朧 げに映る人影に体重を預けた。
この匂いと体温と安心感は知ってる。
間違いなく城崎だ。
「望月にしては飲んだな。」
「って、おい!大丈夫か?」
「大丈夫か?じゃないですよ。先輩がお酒弱いの知ってて強要するなんて、パワハラです。俺が訴えてもいいですけど。」
俺の肩を掴む手に力が籠った。
城崎、怒ってくれてるんだ。
毎回思うけど、城崎は俺のためなら簡単に周りを敵に回してしまいそうな行動取るから、見ていて不安になる。
城崎の裾をキュッと握ると、城崎はそれに気づいて俺の手を優しく包んだ。
「ちょ、城崎…、目が怖いって…!俺らも冗談のつもりで…なぁ?」
「うわー最低〜。あんたそんなんだから彼女できないんでしょ〜。」
「望月さん、大丈夫ですかぁ?」
隣のテーブルで飲んでいた女性陣も駆けつけてくる。
あー、でもなんかどんどん意識がふわふわしてきた。
やべー……。
「……………さき」
俺は城崎の名を呼びながら、意識を飛ばした。
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