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第246話
「先輩………、先輩っ!よかった…っ」
「ん……」
目を開けると白い天井と、淡い色をしたカーテン、それに城崎が安心した顔で俺を抱きしめていた。
背に当たるマットレスは硬い。
右手には点滴……、点滴?!
「おー、起きたか。」
「透さん、本当にありがとうございました。」
カーテンをめくって現れたのは、いつか城崎が風邪引いた時にお世話になった倉科さん。
城崎は倉科さんにぺこぺこ頭を下げていた。
「大学生でもねーんだから、酒の自己管理くらいちゃんとしろ。しかもおまえも側にいたんだろうが。」
「仰る通りです…。すみませんでした。」
「いや、城崎は悪くないです。俺が断れなかったから…。」
「目の前に好きな奴がいるのに守れねぇ夏月も悪りぃ。」
「本当にその通りです…。」
城崎は全く悪くないのに、城崎が怒られている。
というか、俺なんで倉科さんのクリニックに…?
「俺……」
「急性アルコール中毒、軽症だけど。夏月が早く連れてきたからよかったものの、って感じだな。」
「そうなんですね…。」
「こいつ、もう閉まってんのにすげぇ剣幕で訪ねてきたんだぞ。あんたも年上なんだから、甘えてばっかじゃ格好つかねぇだろ。少しは安心させてやれ。」
城崎は俺を抱きしめたまま離す様子はなかった。
倉科さんは「点滴終わったら呼んでくれ。」と、カーテンを閉めてどこかへ行ってしまった。
「先輩、返事してくれないから焦って…。本当何事もなくてよかったです……。」
「悪い……」
「先輩優しすぎるから…。無理なものは無理って断ってください。今回は俺がいたのに止められなかったから、俺が悪いですけど…。」
「城崎は何も悪くねぇよ。」
涙声でグズグズ泣いてる城崎に謝る。
急性アルコール中毒なんて初めてだ。
まさか自分がなるなんて思いもしなかったけど…。
自分が酒に弱いってのと、一気飲みはダメだってこと、改めて気付かされた。
「これからは気をつける。」
「先輩はいつもそう言ってるじゃないですか。俺、何度もお酒の飲み過ぎは駄目って言ってるのに…。」
「うん。ごめんな。」
「先輩の嘘つき…。」
「本当、ごめん。」
「急性アルコール中毒で命落とす人だっているんですからね。それに酔っ払って、帰りに交通事故とか…。嫌です。先輩がいなくなるなんて、想像もしたくないです。俺に心配かけないで…。」
「うん。」
「先輩がもし死んだりなんかしたら、俺、あとを追いますからね。」
「そんなこと言うなよ…、もう心配かけないようにするから。」
城崎を泣き止ませているうちに点滴が終わり、抜針してもらって俺の家に二人で帰宅した。
城崎も俺も疲れ切って、お風呂に入った後すぐに眠りについた。
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