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第253話

翌朝、城崎に起こされて、腰をさすりながらベッドを出る。 歳だな……。 迫る30歳を目前にして、ヤリすぎで歳を実感するとは…。 「おはようございます、先輩♡」 「ん、おはよう。」 城崎はおはようのキスをして、俺を抱きしめる。 キッチンからいい匂いがする。 「城崎、どこ触ってんだよ。」 「え。」 「とぼけんな。」 「こ、腰大丈夫かなぁって…?」 「お前の手があるのは腰じゃないけど。」 早く食べたいのに、城崎は俺を抱きしめたまま、両手で俺の尻を揉んでいる。 言い訳も苦しすぎて、つい笑いそうになった。 「だって…!先輩が悪いんですよ、そんな可愛いお尻してるから…!」 「誰が可愛い尻だ。寝言言ってねぇで離れろ。」 「う〜…。もう少しだけ揉ませてください…。朝ごはんとお弁当の御礼ってことでいいですから…。」 城崎はそのあと3分くらい、うっとりした顔で俺の尻を揉み続けた。 城崎がこんな助平だなんて知ったら、会社の女の子たちは卒倒しそうだ。 俺が変な気分になりそうだったので、城崎を突き飛ばしてダイニングへ向かった。 目の前にフレンチトーストにサラダ、珈琲が並べられて、まるでカフェに来たみたいだ。 「美味そう。いただきます。」 「あー………、喜んでる先輩見つめてるだけでご飯三杯はいけそう…。」 「何馬鹿言ってんだよ、早く食え。遅刻するぞ。」 「先輩と同棲、最高すぎ…。一週間とか無理ですよぉ。」 こんな美味い飯が食卓に並んでいるのに、城崎は項垂れている。 俺は時計を見て、ハッとした。 「やべ。このままゆっくりしてたら、遅刻するぞ!」 「やーだー。先輩〜〜」 「ほら、歯磨いて家出るぞ。」 「俺の話、ちゃんと聞いてました〜?」 「家帰ったら聞くから!」 飯食って歯磨いて、ネクタイを結びながら忘れ物がないか確認する。 靴を履いてドアを開けようとすると、後ろからグッと城崎に腕を引かれた。 「何?」 「いってきますのチュー。」 「ん………ぁっ…」 壁に追い詰められて、舌を絡められる。 いってきますのチューにしては長くない?! 息も整えないままされたから、苦しくて城崎の肩を叩くと唇が離れた。 「今日、あんまり会えないから…。」 「あ……、そういうこと…」 「帰ったら、ちゃんと話聞いてくださいね?」 「わかったよ。ちゃんと聞く。」 「はいっ…!じゃあ、行きましょう。」 城崎は嬉しそうに笑って、玄関のドアを開けた。

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