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第254話

今日の外回りは、ちゅんちゅんとだ。 会社に資料を取りに行き、待ち合わせの駅でちゅんちゅんを待つ。 「望月さーん、お待たせしました!」 「いや、時間通りだよ。おはよう。」 「おはようございますっ!今日は頑張りましょうね!」 相変わらず明るい。 でも、まだまだ暑いこの時期にちゅんちゅんの熱量は少し暑すぎる。 「あんまり緊張してないみたいでよかった。」 「昨日彼女に癒してもらったんで!」 「惚気んな、ばーか。」 「いいじゃないっすか!望月さんも彼女さんと同棲中なんですよね?俺やっと話せる相手できたーって内心喜んでたんすよ〜?」 「ははは……。」 厳密には彼氏なんだけどな。 なんて言えるわけもなく、俺は取引先に着くまでちゅんちゅんの惚気話に付き合わされることとなる。 「彼女さんは年下っすか?」 「あぁ、そうだね。」 「俺は同い年なんすけど、年下彼女、男は誰だって一度は憧れたことありますよね〜。守ってあげたいっつーか!」 「そうだな〜。」 俺は守られている側な気がしなくもないが。 俺の恋人は男前だからな。 男だから当たり前なんだけど…。 「望月さんは、彼女さんのどんなとこが好きなんすか?」 「好きなとこ…。まぁ、全部かな。」 「嫌なとこ、ないんすか?」 「うーん………。」 強いて上げるなら、ねちっこいとこ? たまに強請ってもイカせてくんねぇし。 絶対言わねーけど。 「ないな。」 「へぇ〜!めちゃくちゃアツアツっすね!」 「まぁな。ちゅんちゅんは?」 「俺は彼女の笑顔がめちゃくちゃ好きっす!もう見てるだけで疲れ取れちゃうっていうか!」 「それはわかるかもな〜…。」 「でしょ!」 あー、やばいやばい。 あんまり話しすぎると、ボロが出そうで怖い。 内心そう思ってるなんてつゆ知らず、ちゅんちゅんは御手前の勘の鋭さを発揮する。 「そういえば俺、望月さんと城崎さんもしかしてデキてるんじゃないかって思ってたんすけど、とんだ勘違いだったんすね〜!」 「………っっ?!?!!」 思わず口につけていた水を吹き出しかけた。 突然図星を突かれて、動揺が隠せない。 「そんな驚きます?」 「い、いやだって、変なこと言うから…!」 「変っすか…?でも城崎さんって、絶対に望月さんのこと好きだと思うんすよねぇ。」 「な、なんで……?」 「見たらわかるじゃないっすか。望月さんにだけ明らか態度違うし、優しいし、なんか俺とか柳津さんが望月さんに話しかけると異様に怒るし。あれって好きな子に嫉妬してるようにしか見えなくないすか?」 ちゅんちゅん、恐るべし。 えぇ?俺そんなにアプローチかけられてたの? いや、でもちゅんちゅんは今年度入社だから、俺と城崎が付き合ってから見ている期間の方が長いのか。 だからか?だからだよな? 他の社員にバレている様子は今のところないし…。 「ちゅんちゅん、そんな変なこと俺以外に絶っっ対に言うなよ?」 「なんでっすか?」 「それが本当か嘘かに関わらず、その根も葉もない噂だけで城崎のイメージが悪くなるんだよ!」 「……?わかったっす。」 ちゅんちゅんはあまり納得してない様子だが、根っからの悪い奴ではないので広めることはないと思う。 にしても、城崎ってそんな分かりやすかったのか…。 帰ったら注意しようと心に決めて、俺は今日の仕事をやり切った。

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