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第257話

城崎との一時的な同棲も、今日を含めて残り3日だ。 いつも通り仕事を終えて、一緒に帰宅し、夕食も終え、今はリビングでだらだらしている。 「先輩、これ食べます?」 「ん、いる。」 「はい、あーん♡」 マカダミアナッツがチョコレートでコーティングされたお菓子。 城崎は好んで甘いものを食べないから、もしかしたら俺用に買ってくれたのかもしれない。 言われるがまま口を開けると、城崎は俺の口の中にチョコを放り込み、その指で俺の唇に触れる。 「何……。」 「指にチョコ付いちゃった。……舐めて?」 「手洗えよ。」 「やだ。先輩が綺麗にしてください。」 まったく引く気のない城崎を見て、俺は観念して差し出された城崎の指を舐めた。 俺が舐めるたびに、城崎はニマニマ笑い、体を少し震わせた。 「何なんだよ?」 「すっげぇゾクゾクしました。なんか先輩を服従させてるみたいで…。」 「アホか。」 「変だな、俺こんな性癖なかったと思うんですけど…。」 頼むから変な性癖だけは開拓しないでくれと切に願った。 SMなんて絶対嫌だ。せめてソフトなやつにしてほしい。 ハードなやつはマジで無理。受け入れられない。 「あ、そういえば城崎。」 「なんですか?」 「言い忘れてたんだけど、これから外ではもうちょっと立ち振る舞いっつーか、なんつーか…。」 「??」 「俺への態度っつーの?改めてくれないか?」 ふと、昨日のちゅんちゅんとの会話を思い出す。 俺と城崎がデキてると思われてたやつな。 「態度……ですか?」 「あぁ。なんかちゅんちゅんに勘繰られてさ…」 「別に放っておけばよくないですか?」 「ちゅんちゅん、城崎が俺のこと好きだって気づいてたぞ。」 「だって、先輩に気付かれたくてアピールしてますからね。」 俺の言葉に、城崎はさも当たり前かのようにそう言った。 俺は驚いて城崎を見る。 「いや、俺たちもう付き合ってるじゃん!!」 「恋人に好きだって気持ち伝えたいのは、至極当然のことじゃないですか?」 「え、あ…、まぁ、そう言われると……。じゃなくて!職場では控えろって話だよ!」 「えー。例えば?」 た、例えば…? そう言われるとなんか困る。 だって俺自身、何がバレたのか自覚していなかったし…。 「あ…!俺に対する態度だけ違うって言ってた!!他の人と一緒にすればいいんじゃん?涼真とかと同じでさ!」 「は?無理ですよ。第一、好きな人を特別扱いするのは当たり前でしょ?」 「そうだけど、そうじゃなくて!」 「俺は先輩のこと、他の人と同列の扱いなんてできません。それだけは譲れないし、改める気はないですよ。」 城崎は俺を抱きしめて駄々をこねた。

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