257 / 1069
第257話
城崎との一時的な同棲も、今日を含めて残り3日だ。
いつも通り仕事を終えて、一緒に帰宅し、夕食も終え、今はリビングでだらだらしている。
「先輩、これ食べます?」
「ん、いる。」
「はい、あーん♡」
マカダミアナッツがチョコレートでコーティングされたお菓子。
城崎は好んで甘いものを食べないから、もしかしたら俺用に買ってくれたのかもしれない。
言われるがまま口を開けると、城崎は俺の口の中にチョコを放り込み、その指で俺の唇に触れる。
「何……。」
「指にチョコ付いちゃった。……舐めて?」
「手洗えよ。」
「やだ。先輩が綺麗にしてください。」
まったく引く気のない城崎を見て、俺は観念して差し出された城崎の指を舐めた。
俺が舐めるたびに、城崎はニマニマ笑い、体を少し震わせた。
「何なんだよ?」
「すっげぇゾクゾクしました。なんか先輩を服従させてるみたいで…。」
「アホか。」
「変だな、俺こんな性癖なかったと思うんですけど…。」
頼むから変な性癖だけは開拓しないでくれと切に願った。
SMなんて絶対嫌だ。せめてソフトなやつにしてほしい。
ハードなやつはマジで無理。受け入れられない。
「あ、そういえば城崎。」
「なんですか?」
「言い忘れてたんだけど、これから外ではもうちょっと立ち振る舞いっつーか、なんつーか…。」
「??」
「俺への態度っつーの?改めてくれないか?」
ふと、昨日のちゅんちゅんとの会話を思い出す。
俺と城崎がデキてると思われてたやつな。
「態度……ですか?」
「あぁ。なんかちゅんちゅんに勘繰られてさ…」
「別に放っておけばよくないですか?」
「ちゅんちゅん、城崎が俺のこと好きだって気づいてたぞ。」
「だって、先輩に気付かれたくてアピールしてますからね。」
俺の言葉に、城崎はさも当たり前かのようにそう言った。
俺は驚いて城崎を見る。
「いや、俺たちもう付き合ってるじゃん!!」
「恋人に好きだって気持ち伝えたいのは、至極当然のことじゃないですか?」
「え、あ…、まぁ、そう言われると……。じゃなくて!職場では控えろって話だよ!」
「えー。例えば?」
た、例えば…?
そう言われるとなんか困る。
だって俺自身、何がバレたのか自覚していなかったし…。
「あ…!俺に対する態度だけ違うって言ってた!!他の人と一緒にすればいいんじゃん?涼真とかと同じでさ!」
「は?無理ですよ。第一、好きな人を特別扱いするのは当たり前でしょ?」
「そうだけど、そうじゃなくて!」
「俺は先輩のこと、他の人と同列の扱いなんてできません。それだけは譲れないし、改める気はないですよ。」
城崎は俺を抱きしめて駄々をこねた。
ともだちにシェアしよう!