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第259話
あっという間に金曜日。
定時に仕事を終えて、城崎と家に帰る。
「こうやって同じ家に帰るの、今日で最後なんですね…。」
「同棲すんだろ?」
「でも、準備が整うまでは離れ離れじゃないですか…。」
城崎は寂しそうに俯いた。
今まで別々の家で暮らしてたのに、人間ってのは強欲な生き物だ。
与えられたらそれが当たり前になってしまって、もっとその先のものが欲しくなる。
俺もこの一週間で、城崎といることが当たり前になってしまったから、明日で最後ってのはなんか寂しい。
「手ぇ、繋ぐ……?」
「……!!」
「人が来たら離すからな。」
そう約束して、城崎の手を握る。
普通に握ったら、恋人繋ぎに繋ぎ変えられた。
「おい…。」
「恋人ですから。」
「見られたらどうするんだよ…。」
「見せません。」
見られたら、つってんのに解決してねぇ。
まぁいいか。
危機管理能力が高いのやら低いのやら、自分でわからなくなってきた。
どうも城崎が好意でしてくれてると思うと、折れてしまうというか。
今日も職場で、いつもなら触ってきそうなところも我慢してくれてたの知ってるし。
「なー城崎、今日の飯なに?」
「今日はトンカツです。」
「やった!最高!」
「ふふ。喜んでくれてよかったです。」
なんとなく聞いた今日の夕飯にテンションが上がり、無意識に歩くペースが速くなる。
城崎はそんな俺を見て笑いながら、俺に合わせて少しペースを上げてくれた。
「ねぇ、先輩?」
「ん?」
「明日はお休みですね。」
「うん。」
「今日はたくさんシましょうね…?」
「ぶっ…!!」
てっきり城崎も俺みたいに何気ない会話を飛ばしてくるのかと思ったら、がっつり夜のお誘いで思わず吹き出した。
もう既にエロ崎が爆誕している。
顔が、声が、既にエロい。
「いーっぱい食べて、スタミナつけて、先輩何時間頑張れるかな?」
「………っ」
「もちろんお風呂も一緒に入りましょうね?」
「……………わかってるよ。」
あー、今日は絶対夕食後から始まるやつだ。
ドキドキバクバク。
期待して早鐘を打つ心臓を押さえて、残りわずかな帰路を歩いた。
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