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第267話
楽しいな。
幸せだ。
ずっとこうして声を聞いていたい。
『綾人さんがこんなになるの、新鮮。』
「そう?」
『だっていつも俺からじゃないですか。だからすげぇ嬉しい。』
「なぁ、明日やっぱ会えない?遅くなってもいいから。」
好きが溢れて止まらない。
社会人だし、そんなに頻繁に会えないことだって割り切らなきゃいけないのに。
城崎は用事があるって言ってるし、恋人がいたって一人の時間が欲しいのもわかるし。
でも思わず気持ちが溢れて、口に出た。
『えぇ〜?』
「駄目……か……」
『俺は今すぐにでも会いたいんですけど。綾人さんは明日でいいの?』
「……?」
城崎の言葉を理解するのに、本当数秒。
目の前の扉が開いて、今一番会いたかった大好きな男が立っている。
「ただいま。」
「な……んで……?」
「綾人さんの声聞いてたら、会いたくて戻ってきちゃいました。」
漫画だったら、『てへ』と書かれてしまいそうな無邪気な顔で、城崎が帰ってきた。
ポカンとした俺を見て、城崎はくすくす笑っている。
「俺見送ってからずっとここにいたんですか?」
「え…あ……、うん……」
「会いたいとか声聞きたいとか、可愛すぎますよ、綾人さん。」
俺は城崎に抱きしめられて、胸に収まった。
城崎の匂いだ。
すげぇ安心する……。
「明日の用事は…?」
「まぁ、いつでもいいかなって。こんな可愛い綾人さん放っておけないし。」
「泊まる…?」
「はい、勿論。一緒に寝ますよ。ほら、お風呂入りましょう、ね?」
靴を脱いで、俺の腕を引いてリビングへ向かう。
何これ、本当にすげぇ嬉しい。
風呂を沸かして、一緒に入って、そして今日もシングルベッドに二人で潜った。
「綾人さん、おやすみなさい。」
「うん。おやすみ、夏月。」
どちらからともなく、唇を合わせた。
あぁ、好きだ。
本当に大好きだ。
「戻ってきてくれて、ありがと…。」
「ふふっ。早く家決めなきゃなぁ〜。」
「うん。」
「広さは綾人さん家か、もう少し広いくらいで、ベッドは大きくて〜…」
「バスタブも二人で入れるやつな。」
「狭くても俺はいいですけど。」
「嫌だし。男二人で狭いのは、冗談抜きで本当狭いから。」
俺たちはまだ決まってもいない新居の話をしながら、いつの間にか眠りについた。
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