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第268話
寂しくも同棲お試し期間が終わり、俺たちは毎日仕事終わりに各自の家に帰宅することになった。
日曜の夜はとんでもなく寂しかった。
ベッドに一人、シングルベッドなんだから俺一人で寝るのが当たり前なのに、こんな余裕あったっけ?とか、もっと温かくなかったっけ?とか。
なかなか寝付けずに城崎に電話して、声を聞いて寝落ちした気がする。
月曜からはまた仕事が始まって、疲れた勢いで風呂入って寝るを繰り返して、早くも週末に差し掛かろうとしている。
まぁお互いこんなに同棲を求めてるのなら、どうせ事は早く進むだろう。
いらない荷物とかをちまちま整理していると、城崎から電話がかかってきた。
「城崎?」
『あ、先輩。今いいですか?』
「うん。」
『明日会いたいなぁって、つい電話しちゃいました。』
明日は土曜日。
城崎が慌てて帰ってしまったから、誘おうにも誘えなかった。
「あ、会う!」
城崎からお誘いが来たのが嬉しくて、つい声が上擦る。
電話越しに城崎が笑っているのが聞こえた。
「な、なんだよ…?」
『ふふっ…。いや、だって先輩すごく嬉しそうだから。』
「っ!!」
『ねぇ先輩、久々に俺ん家来ませんか?』
「行く。」
嬉しい誘いに思わず即答する。
ちょっとがっつきすぎたか?と思ったけど、城崎は気にしていなさそうだ。
『迎えに行きますね。』
「いいよ、俺一人で行けるし。」
『んー、でも少しでも長い間先輩と居たいから。』
「じゃあ早く行く。だから待ってろよ、家で。」
『わかりました。待ってますね。』
「うん。じゃあ、また明日な。」
『はい。おやすみなさい。』
「おやすみ。」
通話を切ろうとして耳からスマホを離そうとした瞬間、電話越しに『先輩』と俺を呼ぶ声が聞こえた。
「ん?」
『先輩……、愛してます。』
リップ音とともに電話が切れた。
嬉しいのか恥ずかしいのか、俺はブワッと体を熱らせてベッドに入る。
「…………俺だって愛してるっつーの。」
呟いた俺の言葉は、城崎には届かないまま静寂に消える。
なんでこんなに好きなんだろう?
どうしてこんなにもドキドキするんだろう?
今が一番気持ちのピークなんだろうなって、今まで何回も思ったけど、城崎を想う気持ちは日に日に増していくばかりだった。
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