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第280話

会社に着くと、昼休み中で社員がまばらに立っていた。 部署に入ると突然後ろから肩に腕を回される。 「おそよ〜、綾人。」 「涼真!」 「今日はどうした?」 どうしたもこうしたも…。 涼真はわかって聞いてるからタチが悪い。 「寝坊。」 「ほんとか?」 「寝坊つったら寝坊だってば。」 俺の口から城崎と居たって言わせたいんだろうな。 涼真はにやにやした顔で、ある方向を指差す。 「見てみろよ。朝からツヤッツヤでいつもに増してオーラ放ってるから、女の子たちの視線独り占めしてるぜ?」 「え?」 涼真が指した方を見ると、城崎が女性社員に囲まれていた。 俺が思うにいつもの城崎だけど、何が違うんだ? てか、恋人いるって発表してもあの人気なのかよ。 「取り返しに行かなくていいの?」 「別に。」 「ふぅ〜!彼氏の余裕ってやつ?」 「うるせー。会社でそういうこと言うな。」 涼真の冷やかしには慣れたもんだ。 俺だって何も思わないわけじゃないけど、城崎は態度とか行動で示してくれたし。 信じないのはちげぇじゃん…。 ジッと見つめていると、たまたま振り返った城崎が俺に気づいて駆け寄ってきた。 「おはようございます、先輩。」 「おはよ……。」 「ここ、クセ付いてますよ。」 城崎は体を寄せ、俺の髪を触る。 こんなとこで何してんだよと思い手を払おうとした瞬間、カシャっと嫌な音がした。 「………ご馳走様です。」 「おい!千紗!!」 スマホをこちらに向けていて、どうやら写真を撮った様子の千紗。 勘弁してくれ。 元とはいえ彼女だった女性に、こんな恥ずかしい姿で萌えられてたまるか! 「来ないでー!!」 「それ消せ!今すぐに!!」 「やーだー!!私の秘蔵フォルダに入れるのー!」 「は?他にもあるのか?!本当に消せって!!」 事情を知らない人からすれば、変な状況。 千紗のやつ、俺が気づかないうちにそんなに写真撮ってたっていうのか? 腐女子というのがどこまでのものかわからないが、千紗はもしかしてその中でも群を抜いてたりする? とにかく元カノに応援されるのはいいけど、それを萌に使われるのはなんか嫌だ!!! 「ちーーさーーー!!!」 「キャー!!!」 昼休みが終わるギリギリに千紗を捕まえ、とりあえずさっきの写真を消してもらって、時間もないので自部署に戻った。

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