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第283話
5連勤を終えて金曜日。
みんなが続々と仕事を終えて退社していく中、俺は仕事が終わっているのに帰れる状況ではなかった。
珍しく城崎が残業を強いられているからだ。
明日が俺の誕生日だから、今日は城崎が家に来る予定だったのだが、帰る間際に押し付けられた仕事が思いの外多かった。
さすがの城崎も一人で捌 くにはなかなか多く、先に帰れと言われたものの放っておけなくて手伝うことにした。
「すみません…。」
「いや、城崎は悪くねぇだろ。」
「でも……。本当に家で待ってていいですよ?俺すぐに終わらせて帰るんで…。」
「この量一人でやってたら何時になるんだよ。」
「………」
「日付変わる時、一緒に居てくれるんだろ?それに、俺だって少しでも長く城崎と一緒に居たいからいいの。」
二人でやれば20時には帰れると思う。
基本はいい上司なんだけど、たまーにブラックなんだよな。
しかもこんな時に限って…。本当勘弁…。
はぁ…とため息をついていると、城崎が涼真のデスクに座った。
「どした?」
「もう誰も居ないし、甘えてもいいですか…?」
「えっ…。いやでも、まだ社内に人結構いるし…。」
「先輩が可愛いこと言うから。はぁ〜…、早く帰っていちゃつきたいです…。」
ぎゅーっとしばらくの間抱きしめられ、名残惜しそうに離れていき仕事に戻った。
まぁ今のくらいなら、万が一誰かに見られてもスキンシップだと誤魔化せる気もする。
涼真のデスクを我が物顔で使いながら、城崎はサクサクと仕事をこなしていく。
あれ?これ俺いらなかった?って位のスピードで。
結局19時前にはノルマを終え、一緒に職場を出た。
「あー…、もうこんな時間ですね。」
「今日も外で食う?」
「いや、今日は早く帰って先輩とイチャイチャしたいです。」
「それもそうか。」
キスしたいし。
いろんなとこ触ってほしいし。
甘えてほしいし、甘えたい。
力いっぱい抱きしめてほしい。
でも今から家帰って二人分の飯作るの、負担にならないかな、なんて気になってしまう。
最近いつも仕事終わりに走って帰ってて忙しそうだった。
電話しても、「大丈夫ですよ。」の一点張り。
それに今日の残業だって、ほとんど城崎が終わらせたようなものだ。
「なぁ、やっぱり外で食べない?」
「なんでですか?」
「すぐ食べ終わるラーメンとかでいいし。それがテイクアウトでも。」
「俺の手料理、嫌ですか?」
「違う!そうじゃないよ。」
俺の言い方が悪かったのか、城崎はむすっとしてしまい、雰囲気が悪いまま無言で帰宅することになった。
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