283 / 1069

第283話

5連勤を終えて金曜日。 みんなが続々と仕事を終えて退社していく中、俺は仕事が終わっているのに帰れる状況ではなかった。 珍しく城崎が残業を強いられているからだ。 明日が俺の誕生日だから、今日は城崎が家に来る予定だったのだが、帰る間際に押し付けられた仕事が思いの外多かった。 さすがの城崎も一人で(さば)くにはなかなか多く、先に帰れと言われたものの放っておけなくて手伝うことにした。 「すみません…。」 「いや、城崎は悪くねぇだろ。」 「でも……。本当に家で待ってていいですよ?俺すぐに終わらせて帰るんで…。」 「この量一人でやってたら何時になるんだよ。」 「………」 「日付変わる時、一緒に居てくれるんだろ?それに、俺だって少しでも長く城崎と一緒に居たいからいいの。」 二人でやれば20時には帰れると思う。 基本はいい上司なんだけど、たまーにブラックなんだよな。 しかもこんな時に限って…。本当勘弁…。 はぁ…とため息をついていると、城崎が涼真のデスクに座った。 「どした?」 「もう誰も居ないし、甘えてもいいですか…?」 「えっ…。いやでも、まだ社内に人結構いるし…。」 「先輩が可愛いこと言うから。はぁ〜…、早く帰っていちゃつきたいです…。」 ぎゅーっとしばらくの間抱きしめられ、名残惜しそうに離れていき仕事に戻った。 まぁ今のくらいなら、万が一誰かに見られてもスキンシップだと誤魔化せる気もする。 涼真のデスクを我が物顔で使いながら、城崎はサクサクと仕事をこなしていく。 あれ?これ俺いらなかった?って位のスピードで。 結局19時前にはノルマを終え、一緒に職場を出た。 「あー…、もうこんな時間ですね。」 「今日も外で食う?」 「いや、今日は早く帰って先輩とイチャイチャしたいです。」 「それもそうか。」 キスしたいし。 いろんなとこ触ってほしいし。 甘えてほしいし、甘えたい。 力いっぱい抱きしめてほしい。 でも今から家帰って二人分の飯作るの、負担にならないかな、なんて気になってしまう。 最近いつも仕事終わりに走って帰ってて忙しそうだった。 電話しても、「大丈夫ですよ。」の一点張り。 それに今日の残業だって、ほとんど城崎が終わらせたようなものだ。 「なぁ、やっぱり外で食べない?」 「なんでですか?」 「すぐ食べ終わるラーメンとかでいいし。それがテイクアウトでも。」 「俺の手料理、嫌ですか?」 「違う!そうじゃないよ。」 俺の言い方が悪かったのか、城崎はむすっとしてしまい、雰囲気が悪いまま無言で帰宅することになった。

ともだちにシェアしよう!