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第286話

城崎、辛くないのかな? もう心はトロトロに溶かされて、身体だって力抜けて抵抗する力なんて残ってないのに。 ずっとキスだけ。 気持ちいいけど……、俺は心のどこかでもっとその先を期待してる。 「先輩…、すげぇ(とろ)けた顔してる。」 「………ぅ…んん…」 「先輩の唇、柔らかくて気持ちいい。」 「ふっ…ぁ……」 というか、太腿にずっと城崎のが当たってるから、気になるっていうか…、集中力が持っていかれるというか…。 そっと手を下に移動させると、城崎のソレに触れた。 硬っ……。 熱いし、デカすぎ…。 こんなに熱くしてるのに、なんでいつもみたいに抱いてくれないんだろう。 今日はする気ないのか…? 城崎は俺の手を掴み、ベッドに縫い付ける。 キスを止め、俺の顔を覗き込んで真っ直ぐに目を合わせてきた。 「先輩、キスだけじゃ嫌?」 「んぅ…っ」 「俺の、欲しい?」 キスだけじゃ嫌かなんて聞き方、意地悪い。 自分だってこんなに硬くしてるくせに、そんな熱い息で、切羽詰まった声で、幸せそうな顔で俺にそんなこと聞くなっての…。 「…………しぃ…」 「なんて?先輩、もう一回言って…?」 恥ずかしくて声も出なくて、目なんか合わせてられるはずもなく顔を逸らす。 なのに城崎は俺の顔を掴んで、強制的に目を合わせた。 「城崎が……欲しい……」 「よくできました。」 言わせたくせに。 そんな可愛くない台詞を言おうとした俺の口を、城崎は塞いで、熱く、激しく俺を抱いた。 ヤバい。 意識飛びそう…。 ビクビクっと俺の身体の奥で城崎が震える。 気持ちよさに身を任せて意識を飛ばそうとした時、霞む視界の中で城崎が微笑んだ。 「先輩、誕生日おめでとうございます。」 あぁ、日付変わったのか。 視界の隅に映るデジタル時計には9/18 0:00の表記。 やべー、嬉しい…。 でももう……。 「寝ていいですよ。」 「も………、ちょっと……」 もっと城崎の顔見ていたいのに。 強い眠気に逆えず、だんだん目が閉じていく。 でも城崎に抱きしめられて、城崎が俺の中にいるから、なんだか今日は城崎に包まれていい夢みれそうだ。 「おやすみなさい。」 最後に聞こえたのは城崎の優しい声だった。

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