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第290話
シャワーを終えて椅子に座らされる。
まずは朝ごはんらしい。
「朝は先輩の好きなパンケーキと珈琲。お昼と夜はリクエストで何か作ります。」
いただきます、と手を合わせて朝ごはんを食べる。
相変わらず城崎の作るパンケーキはふわふわで美味しい。
アクセントに乗ったベリーソースが甘酸っぱくてちょうどいい。
あっという間に平らげると、城崎はすぐに食器を片して俺の前に座り直した。
「先輩、改めて誕生日おめでとうございます。これ、俺からプレゼントです。」
「ありがとう。開けていい?」
「はい。」
城崎は綺麗にラッピングされたプレゼントを俺に差し出した。
丁寧にリボンを解き、包装紙を外して箱の蓋を開ける。
「キーケース?」
「はい。先輩いつも鍵そのまま持ってたでしょ?」
「たしかに。へぇ〜。めちゃくちゃいいじゃん。色も好き。ありがとな。」
深緑の革のキーケース。
大人っぽくてとても気に入った。
たしかにこの歳でキーケース持ってないのも珍しいよなぁ。
ボタンを外して中を見ると、一つだけ鍵が付いていた。
うちの鍵ではなさそうだし…。
「これ城崎の家の鍵?」
「違いますよ。」
「じゃあ何の鍵?」
「どこの鍵だと思います?」
聞いてるのに質問で返されて戸惑う。
どこって…。
俺の家でもなくて、城崎の家でもなくて、チャリ?バイク?車?
「わかんねぇ…。」
「教えてほしい?」
「うん。」
知らない鍵持ってるの怖いし。
顔を上げると城崎はすげぇ嬉しそうな顔で言った。
「俺たちの新しい家の鍵です!」
「え?」
「一緒に住みましょう、先輩。」
新しい家…?
俺たちの……?
「ええええええ?!!」
「え、ダメでした?」
「いや、待っ……、え?!」
「その反応はどっち…?」
「嬉しい。すげぇ嬉しい!!え?同棲ってこと?言い出してから早くないか?!」
「俺、すげぇ頑張ったもん。毎日早く帰って内見行ってたし。俺と先輩にぴったりのいい部屋見つけたんです。」
なんかびっくりしすぎて、城崎にこの嬉しさは伝わっていない気がする。
俺今、すげぇ嬉しいのに。
伝わってるかな?
仮同棲期間を経てから、本当に城崎とずっと一緒に居たくて堪らなかったから。
見に行きたい。早く住みたい。
ソワソワしながら城崎と目を合わせる。
「もう契約も済ませたし、家具もある程度揃えてます。行きますか?」
「行く!!」
俺は食い気味に返事し、リビングから何着か洗濯した服を鞄に詰める。
必要なものとかはとりあえず今度で。
今はとりあえず、城崎と住む新しい家に早く行きたい。
「会社から少し離れてます。遠くてごめんなさい。」
「全然いい。バレないように気遣ってくれたんだろ?」
「まぁ…、はい。」
城崎の手を引きながら駅へ向かい、わくわくと心を躍 らせながら電車に揺られた。
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