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第291話
「着きました。ここです。」
「おお…!」
会社の最寄駅から電車で30分、
駅から歩いて5分、
まだ建って年数はそこまで経ってなさそうな綺麗なマンション。
11階建ての最上階、一番端の部屋。
「先輩、よかったら開けてください。」
「おう。」
深呼吸してから、さっき城崎にもらったばかりのキーケースの中から鍵を取り出す。
鍵を開けて中に入ると、それはまた綺麗で感動した。
「お邪魔します…。」
「違いますよ、先輩。これからは『ただいま』です。」
「た、ただいま……。」
「あと、これも。」
「んっ…!」
腕を引かれて、気づいた時には目の前に城崎の顔があった。
唇が重なり、すぐに離れていく。
ただいまのチューってやつ?
俺は心臓バクバクさせてるのに、城崎はなんてことない顔で部屋の説明を始める。
「リビングは南向きがいいなぁと思って。あと一応一部屋ずつ個人用の部屋と共同の寝室。カウンターキッチンだから、料理しながら先輩の顔も見れますし。どうですか…?」
「めちゃくちゃいい。広いし、綺麗だし。なぁ、全部見てもいい?」
「勿論です。」
リビングに入ると、ガラス戸から陽射しがキラキラと降り注ぎ、電気をつけてなくても明るかった。
ホワイトとベージュを基調とした温かみのある柔らかい雰囲気の部屋で、城崎の部屋よりは俺の部屋に雰囲気は近い。
「テレビは先輩の家から持ってきた方がいいかなーと。俺の家の小さいので。冷蔵庫は大きいのを買いに行ってもいいなって思ってて。とりあえず俺の家のでも大丈夫そうな家電は持ってきてます。」
「ありがとう。」
「お風呂と寝室、見に行きましょう?」
「うん。」
肩を抱き寄せられて、浴室に連れられる。
風呂と寝室紹介すんのに距離詰めてくるとか、意識させる気しかないじゃん、こいつ。
はぁ……、好き…。
「お風呂は先輩の家より少しだけ広め。まぁ毎日一緒に入るのに狭いとか言われるのも嫌なので。」
「毎日?!」
「入れる日は毎日がいい。俺の癒しの時間。ダメですか?」
「い…、いい……けど……。」
シャンプーとコンディショナーとボディソープに並んでローションが見えるのは、さすがに俺の気のせいだよな?
気のせいだと思いたい。
「で、洗面所から出て隣。ここが寝室です。」
「わぁ……」
広いとは言い難いサイズの部屋にダブルベッド。
ヘッドボードにはデジタル時計と、ゴムとローション。その他。
隠す気が微塵も感じられなくて、少し笑ってしまった。
「先輩、笑ってるけどわかってますよね?」
「え?」
「毎日とは言いませんけど、二日に一回はしたいです。週末はどっちもしたいです。いいよね?」
「ま、待って。多くない?」
「俺まだ24。」
「俺もう30。」
「若いです。大丈夫。」
「若くな…、んんっ!」
若くないから無理、とは言わせてもらえず、ベッドに押し倒されてしまった。
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