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第295話

起きるともう外は暗くなっていた。 ヘッドボードにあるライトが柔らかく(とも)る。 今までとは違って二人でも余裕のある広いベッド。 結局城崎と引っ付いてるんだけど、セックス中とか落ちそうみたいなヒヤヒヤ感はなかった。 「先輩、起きたの?」 「あ、城崎……。」 「お腹、大丈夫?」 「…っ!」 城崎は愛おしそうに俺の腹を撫でる。 掻き出してくれたんだろうけど、指じゃ取り切れない奥の方に、まだ城崎の出した精液が残ってる。 変な感じだけど、嫌ではない。 「最後の方、記憶ありますか?先輩めちゃくちゃ可愛くて、もう俺止められなかったです…。」 城崎は俺を抱きしめて髪や(まぶた)にキスを落とす。 最後の方っていつだ? 途中から記憶曖昧でわかんねぇ…。 めちゃくちゃ気持ちよかったのは覚えてるけど……。 「あ。もう18時ですね。ご飯作ります。何がいいですか?」 「え…、あー、でも今から作らせんの悪いし。外で食べる?」 「やだ。こんなエロい顔した先輩、誰にも見せたくないし。」 「なっ…?!」 有無を言わさず、夜ごはんは城崎が作ることになった。 床に散らばった服を着ようと城崎が体を起こす。 城崎の(たくま)しい背中には、痛々しい引っ掻き傷がたくさん残されていた。 「し、城崎…!それ……」 「ん?あー、やっぱ残ってます?」 「誰に……」 「笑わせないでくださいよ。先輩しかいないでしょ。」 「嘘……?俺?ごめん。痛い?」 傷の周りは赤く腫れていて絶対痛いと思うけど、城崎は何ともなさそうな、寧ろ嬉しそうな顔で振り返って俺にキスをした。 「舐めてくれたら治るかも?」 「…………っ」 「ちょ、先輩!嘘!嘘だから!」 背中の傷に舌を当てると、城崎は慌てたように俺を止めた。 少しだけ血の味がした。 まだカサブタになってなくて、じんわりと出血してるってことだろう。 申し訳なくて眉を八の字にすると、城崎は俺の頭を撫でた。 「先輩が付けてくれたし、多少痛くても嬉しいですよ。」 「でも……」 「それに、俺が先輩トぶまでヤッたのが原因だし。恋人が無意識に力入れて付けちゃった傷とか、なんか嬉しくない?」 城崎は服を被って立ち上がった。 キッチンに向かうらしい。 城崎が寝室を出て行ったあと、俺もリビングに向かおうと服を着る。 カウンターキッチンだから、城崎の顔見えるし。 なんなら、俺が手伝ってもいいし。 一人で寝室にいるのも寂しくて、俺は部屋を出てリビングに向かった。

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