297 / 1069
第297話
「出来ましたよ。」
「うわぁ〜っ!」
ソワソワしながらリビングで待っていると、食欲をそそるいい匂いとともに、ハンバーグ、ポテトサラダ、コーンスープに生ハム、ワインが並ぶ。
ワインとかいつぶりだ?
城崎と付き合ってからアルコール制限されてご無沙汰だった。
「ワイン、いいの?」
「誕生日ですから、特別ね。」
「しかもこれ、高そう。」
「生まれ年ワインです。今日にぴったりでしょ?」
「こんな洒落 てんの、初めて。」
グラスに注がれたワインを鼻で楽しむ。
いい香りで味もすごく楽しみだ。
「食べましょうか。」
「うん!」
「先輩の30歳を祝して。乾杯。」
ワイングラスを合わせ、乾杯する。
少しだけ口に入れたワインは、めちゃくちゃ美味しかった。
「やば。美味しい…。」
「それはよかった。あ、今日のハンバーグ、ちょっと自信作です。」
「え、嘘。………美味っ!」
「ワインと合うように、いつもとソース変えてみたんです。お口にあってよかった。」
城崎は俺が感激しているのをみて嬉しそうだ。
こいつ、天才では??
テーブルに並ぶ料理なにもかもが美味しくて、どんどん箸が進む。
ワインの減りも早くて、一度城崎に注意されたけど。
「幸せ………」
「俺も。先輩がこんな喜んでくれて嬉しい。」
「なぁ、城崎ぃ…。今日からずっと一緒?」
「俺はそのつもりで、もう家解約してきましたよ。必要なものは全部こっちに持ってきたし。」
「嬉しい。俺も持ってくるぅ…。」
「先輩、舌足らずで可愛い。本当お酒弱いんだから。」
「ん〜。」
テーブルにうつ伏せ始めたのをみて、城崎は俺をソファベッドに運ぶ。
これからは仕事前だからって帰ったり、会えない日がなかったりしないんだ。
俺も城崎も帰る家は同じなんだ。
やべぇ…、嬉しい……。
「先輩、ベッド行く?」
「風呂はぁ…?」
「一人で入ったら溺れてそうで怖いです。」
「一緒に入ろ…?」
「はぁ……。」
甘えるようにそう言うと、城崎は頭を抱えてため息を吐いた。
嫌われた?
違う。これは城崎が困った時に出る合図の方だ。
「先輩、可愛すぎて堪んない…。」
ほらな。
このまま永遠に俺に夢中になればいいのに…。
「大好き。」
ポワポワした頭で、今一番伝えたいことを口にした。
ともだちにシェアしよう!