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第297話

「出来ましたよ。」 「うわぁ〜っ!」 ソワソワしながらリビングで待っていると、食欲をそそるいい匂いとともに、ハンバーグ、ポテトサラダ、コーンスープに生ハム、ワインが並ぶ。 ワインとかいつぶりだ? 城崎と付き合ってからアルコール制限されてご無沙汰だった。 「ワイン、いいの?」 「誕生日ですから、特別ね。」 「しかもこれ、高そう。」 「生まれ年ワインです。今日にぴったりでしょ?」 「こんな洒落(しゃれ)てんの、初めて。」 グラスに注がれたワインを鼻で楽しむ。 いい香りで味もすごく楽しみだ。 「食べましょうか。」 「うん!」 「先輩の30歳を祝して。乾杯。」 ワイングラスを合わせ、乾杯する。 少しだけ口に入れたワインは、めちゃくちゃ美味しかった。 「やば。美味しい…。」 「それはよかった。あ、今日のハンバーグ、ちょっと自信作です。」 「え、嘘。………美味っ!」 「ワインと合うように、いつもとソース変えてみたんです。お口にあってよかった。」 城崎は俺が感激しているのをみて嬉しそうだ。 こいつ、天才では?? テーブルに並ぶ料理なにもかもが美味しくて、どんどん箸が進む。 ワインの減りも早くて、一度城崎に注意されたけど。 「幸せ………」 「俺も。先輩がこんな喜んでくれて嬉しい。」 「なぁ、城崎ぃ…。今日からずっと一緒?」 「俺はそのつもりで、もう家解約してきましたよ。必要なものは全部こっちに持ってきたし。」 「嬉しい。俺も持ってくるぅ…。」 「先輩、舌足らずで可愛い。本当お酒弱いんだから。」 「ん〜。」 テーブルにうつ伏せ始めたのをみて、城崎は俺をソファベッドに運ぶ。 これからは仕事前だからって帰ったり、会えない日がなかったりしないんだ。 俺も城崎も帰る家は同じなんだ。 やべぇ…、嬉しい……。 「先輩、ベッド行く?」 「風呂はぁ…?」 「一人で入ったら溺れてそうで怖いです。」 「一緒に入ろ…?」 「はぁ……。」 甘えるようにそう言うと、城崎は頭を抱えてため息を吐いた。 嫌われた? 違う。これは城崎が困った時に出る合図の方だ。 「先輩、可愛すぎて堪んない…。」 ほらな。 このまま永遠に俺に夢中になればいいのに…。 「大好き。」 ポワポワした頭で、今一番伝えたいことを口にした。

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