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第300話
「何してんすか…。」
「だってぇ」
「すげぇ痛そう…。つか、やること意味わかんねー…。」
城崎は急いで持ってきた救急箱から消毒液とコットンを取り出して俺の腕を消毒した。
眉を下げて、すげぇ心配そうな顔して。
こんなつもりじゃなかったのに…。
「くしゅんっ!」
「あー、すみません。寒いですよね。」
バスタオルを俺に被せ、消毒したところを清潔なガーゼで覆ってテープで止めた。
お風呂に浸かる予定だったのに、ただ頭と体洗ってセックスしてむしろ体が冷えただけだ。
というか、思った以上に痛かった。
多少酔いは覚めたけど、まだフワフワするし…。
「しろさきぃ…、ごめん…。」
「腕ビニールで覆ってお風呂だけでも浸かりますか?あんまり血流よくしたくないですけど。」
「うん…。」
俺のトンチンカンな行動でただただ心配をかけるという傍 迷惑な30歳…。
反省して大人しくすると、城崎はそれはそれは優しくしてくれた。
湯船はバックハグで入り、風呂から上がって湯冷めしないようにすぐに体を拭いて服を着せてくれる。
至れり尽くせりとはこのことだ。
「ありがと…。」
「お願いだから自分傷つけるみたいなの、やめてください。あー、マジでびっくりした…。」
「ごめんなさい。しろしゃき、許して…?」
「酔ったら可愛いけど意味わかんないことするから、やっぱ先輩にはお酒飲ませないです。」
「やだぁっ!」
ナチュラルにアルコール禁止令が出て、あからさまに残念な表情をしてみるが、「ダメなものはダメ。」と一蹴 された。
でも、もし城崎が突然自傷行為したら俺も禁止させるかもしれない。
俺は自傷行為のつもりではなかったんだけど…。
「俺の可愛い先輩を傷付けるなら先輩でも許しません。」
「どっちも俺じゃん?」
「そうだけどダメですよ。先輩の体は先輩だけのモンじゃないですから。」
「え?」
「恋人なんだから、俺のでもあるでしょ…?」
「…っ!」
何ソレ。
なんでそんなムッとした口…!
「…………そう…かも?」
「かもじゃなくて、俺のって言ってよ…。」
「かっ……」
可愛い…!!
わざと意地悪な言い方してみたら、仔犬モード出てきた。
あざといな、この男…。
「れ もそれなら、しろしゃきの体も俺のら けど?」
「そんなのずっと前からそうですけど。」
「へ?」
「惚れた時点で、俺は先輩に全て捧げるって決めてましたから。」
「っ!!!」
何なの!?
次はめちゃくちゃ格好良いし!!
この無自覚振り回し野郎!!!
「〜〜〜っ!!好き!!!」
「俺も大好きです。」
ぎゅぅっと勢いよく抱きつくと、城崎ははにかみながら俺を抱きしめ返した。
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