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第303話

城崎の顔が近くにあると、つい唇を合わせたくなる。 何度も重ねていると、城崎はクスッと笑って俺の頬を両手で優しく包んだ。 「今日の先輩、本当えっちすぎ。」 「……………ごめん。」 「いや、違いますって。俺今ツヤッツヤなの分かります?なんか心も身体も満たされてて…。幸せすぎて現実味がないんですよね…。」 そんなの俺もだし…。 城崎があまりにも嬉しそうな顔するから、きゅぅんっと胸が締め付けられた。 「俺にたくさん幸せをくれてありがとうございます。」 そう言って、お礼のように城崎からキスをされる。 城崎はいつもそう言うけれど、それは本当俺のセリフだ。 俺より6つも年下で、将来有望、イケメンで引く手数多(あまた)、料理も家事もおまけに気遣いもできて…。 こんなサラブレッドの血、ここで途絶えさせるわけにはいかないはずなのに。 でも誰にも譲りたくないし、神様に怒られるかもしれないけど、城崎を手放す気はない。 城崎も俺のこと離すつもりないみたいだし。 このまま俺と一生……、なーんて。 「どうしたの?」 「んーん。なんか幸せだなって。」 「俺も。そろそろ悪いことが起きる順番回ってきそうで嫌だなー。」 「城崎にはこねぇだろ。」 「えー?じゃあもしきたら、先輩が癒してくださいね?」 他愛もない話をしながら、何度も唇を重ねる。 幸せ。 好き。大好き。 数ヶ月前までは、こんな幸せな30歳迎えられるとは思ってなかったなぁ。 「そんな可愛い顔、俺以外に見せちゃダメですからね。」 「え、そんな顔してる?」 「うん。幸せすぎて堪んないって顔してる。」 可愛いかはともかく、幸せすぎて堪んないってのは合ってる。 顔に出まくりじゃん、俺。 恥ずかしー……。 「そういえば先輩、この家気に入ってくれた?」 「うん。すげー良い。よくこの短期間で見つけたなぁ。」 「いいとこ見つかって本当によかった。先輩と住む家だから妥協はしたくなかったし。」 「おまえの仕事の速さには本当脱帽するよ…。」 「先輩のためならめちゃくちゃ速いですよ、俺。」 たしかに…(笑) 俺にアプローチかけてきてた時も、ご褒美にごはんってだけで大口の契約すぐに取って帰ってきたしな…。 懐かしい……。 「何笑ってるの?」 「いや、ふふっ…。そういや、付き合う前もそんなことあったなーって。」 「あの時は必死でしたからねぇ。猪突猛進(ちょとつもうしん)って感じで。」 「そんなに俺と付き合いたかったの?」 「はいっ♡」 そんな即答されると、改めて照れるな…。 自分で聞いたくせに恥ずかしくて城崎の顔を見れないでいると、グイッと顔を持たれ、目を合わせられる。 「俺を選んでくれてありがとう、綾人さん。」 「………っ」 眩しいくらいの笑顔を向ける城崎に、俺は言葉を失った。

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