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第304話
次の日は全く動けなかった。
足腰ガクガクで、なのに腹も下 してヒィヒィ言いながらトイレに籠 った。
いや、今がその籠ってる最中なんだけど…。
「先輩?大丈夫?ごめんなさい、本当…。」
「いいって……。自分の用事してていいから…。」
「だって俺のせいで…。お腹痛いんですよね?本当すみません…。」
「なぁ、いつまでそこいる気なんだ…?」
トイレの扉の前から城崎の反省の声がずっと聞こえてくる。
下痢してるから匂いとかも気になるし、あんまトイレ近くに居てほしくないんだけど…。
怒ってないし、むしろ忠告されてたのに強請ったのは俺だし…。
「本当ならすぐそばで先輩のこと支えてあげたいんですよ…?中入れてください…。」
「絶対嫌!!!〜〜〜ってぇ……。」
「先輩?!」
トイレの近くに居られることすら嫌なのに、中になんて絶対入れたくない。
城崎のあり得ない発言に言い返していると、数分に一度の腹痛の波が襲ってきた。
マジで痛い。本気で痛い。
なんか痛すぎて眩暈するし、吐きそうだし。
やばい気はするけど、でも本当、トイレ中なんて恋人に見られたくない。
「先輩!先輩!?返事して!!」
ダンダンッと扉を叩く音が聞こえるけど、意識ここにあらずといった感じで、あんまり気にならない。
あー、本当にやべぇかも…。
しかも城崎、無理矢理にでもトイレ入ってくんな、これ…。
せめてケツ拭いて下痢流すだけでも……。
お腹を押さえながら何とかお尻をトイレットペーパーで拭き、洗浄ハンドルを捻 る。
「開けますよ!?」
何で開けたかは知らないが、鍵が外から解錠されてドアが開いた。
下半身丸出しでトイレで意識を飛ばしかけてる俺を、城崎が必死に呼びかける。
「先輩っ!先輩っ…!!」
「………………ず」
「えっ?!なんて?なんて言いました?!」
「……水…、欲しい……。」
「わかりました!!」
城崎はトイレを飛び出して、そして水を持ってすぐに戻ってきた。
ちゃんと常温だし。気が効くじゃん…。
「あー………、死ぬかと思った……。」
「大丈夫?まだ痛い?」
「痛いけど、結構出し切った気はする…。」
どうやら俺は、下痢しすぎて脱水になりかけてたっぽい。
水を飲むと多少気持ち悪さとかはマシになって、喋れるくらいまでにはなった。
「なー、城崎。」
「なんですか?」
「今回は助かったけど、今後トイレ開けんなよ?」
「…………」
「どうやったかは聞かないけど。あと、もう大丈夫だから出て行ってくれる…?」
「…………はい。」
何でそんな残念そうな顔をするかな?
普通人の排泄行為なんて見たくねぇだろ。
とても渋々といった様子で出て行った城崎を見て、俺はなんだか今後が不安になった。
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