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第305話

だいぶ腹痛も治まり、なんとかトイレから出てきた。 腹痛は治ったけど足腰立たないのはなかなか支障が…。 と思っていたら、城崎が駆け寄ってきて、すかさず俺を抱き上げる。 「大丈夫ですか?!心配しました…。」 「うん。ごめん。」 「やっぱり中出しはダメですね…。あと昨日の場合はヤリすぎかも…。あー、先輩の身体は大切にするって決めてんのに…。本当にごめんなさい。」 「城崎が謝ることじゃないし。大丈夫。」 たしかにあの腹痛を何度も経験するのは嫌だけど、その分昨日はすごかったしな…。 反動は仕方ない。男同士だし。 「それより明日までに立てるかの方が心配。」 「ほんとですね。俺、マッサージしてあげましょうか?」 「頼む。」 リビングのソファベッドにうつ伏せになると、城崎は下半身を中心に割と本格的にマッサージをしてくれた。 気持ちよくて自然と声が出るくらいには上手い。 「あ〜、そこ…。」 「ここ?」 「うん。気持ちぃ〜。」 「ここは?」 「うっ、そこもいい…。」 小一時間しっかりと揉み解してもらって、さっきよりは体が軽くなる。 まぁ重くて動けなかったわけではないんだけど。 何とか立つ、歩くくらいはできるか…? 「明日仕事でも帰る時間気にせずに先輩と居れるのヤバいなー。」 「ほんとだな。…………あ。」 「何ですか?」 「スーツとか仕事用の鞄、置いてきた…。」 早く新居を見たくて軽装備で来たことをすっかり忘れていた。 この体じゃ取りに行けそうにもないし…。 「俺、行ってきましょうか?」 「いいの?」 「はい。あとなんか、数日これあれば戻らなくていいってのあれば持ってきますよ。」 「んー、スーツとシャツと下着とあればなんとかなるんじゃないかな。」 「わかりました。じゃあお昼ご飯作ってから行ってきますね。」 城崎はささっとピラフを作り、「いってきます。」とキスしてから出て行った。 まだ出来立てで湯気が立つピラフを口に運ぶと、安定に美味かった。 本当何でもできるなぁ、なんて思いながら、キラキラと陽が差すベランダへ目を向ける。 ベランダには昨日ドロドロになったであろうシーツと掛け布団が干してあって、顔が熱くなった。 「早く帰ってこねぇかな…。」 部屋を見渡しながらそんなことを思う。 これから一緒に暮らすっていうのに、俺は重症だなぁ本当。 昨日はざっとしか見れなかったので、寂しさを紛らわすためにも、一人で暇なうちに家の中を散策することにした。 キッチンは几帳面な城崎らしい整った配置。 家でもこうだったんだろうなぁって、何となく想像がつく。 俺の家のキッチンも最近はこんな感じの配置だったし。 そう考えると、城崎ってなんだか通い妻みたいだったな。 一人でくすくす笑いながら、そういえば城崎と俺の個人部屋は見てなかったなと思い出す。 浴室と寝室の向かい側に位置する部屋へ足を向けた。

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