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第307話
「引いた…?」
「え?」
「俺、先輩のこと好きすぎて隠し撮りとか…、その…、気持ち悪いですよね……。」
アルバムを大切そうに撫でながら、でも表情は暗い。
もしかして、俺が城崎のこと嫌いになるかもとか思ってんのか?
「引いてないよ。」
「………?」
「びっくりはしたけど、引いてない。寧ろ本当に好きだったんだって…、なんか嬉しかったっていうか…。」
「本当に…?」
「本当。城崎もこんな女々しい一面あったんだな。ははっ(笑)」
吹き出すように笑うと、城崎は目を潤ませて俺を抱きしめた。
この様子じゃ、俺に見せるつもりではなかったんだろうな。
ただ片付けの途中だっただけっぽい。
「先輩、大好き。本当に大好き。」
「はいはい。てか、俺と付き合ってから写真ないんだけど?」
「あ、それは…。先輩と付き合ってからのは、いつか一緒に振り返れたらなぁって別のアルバムに…。」
城崎は俺を抱きしめる手を解 き、段ボールからもう一つアルバムを取り出した。
付き合ってまだ半年くらいなのに、城崎片思い期間のアルバムよりページが埋まってそうだ。
「これ、一年経ったらどうなるんだよ(笑)」
「付き合って一年の記念日とかに一緒に見ませんか?」
「いいよ。てか付き合ってからも隠し撮りばっかじゃねぇか。」
パラパラ捲 るとほとんど俺の写真ばっかりで、寝顔とか着替えてる姿とか恥ずかしいところまで撮られまくっている。
「なぁ、これからは一緒に撮ろう?」
「えっ…?!」
「二人で写ってた方が振り返った時嬉しいじゃん。」
そういうと、城崎の表情がパァッと明るくなり、グイッと体を寄せられた。
「先輩〜っ♡じゃあさっそく撮りますね!」
「わっ…!?」
キスされたと同時にカシャッとシャッター音が聞こえる。
は……、え?
「恥ずかしいって!消せ!!」
「学生の時カップルがやってましたよね〜、チュープリ。」
「バカップルだけな?!」
「俺たちもバカップルでしょ?」
「んぅっ…♡」
俺を黙らせるためのキス。
だと思うけど、それすらもこんなに優しい。
「…………ズルい。」
「先輩が可愛いのが悪い。あ、そうだ。俺ね、したいことがあって。」
「なに?」
「同棲する上でのルール。決めませんか?」
城崎は小さな手持ちサイズのホワイトボードとマジックを持って、嬉しそうにそう言った。
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