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第308話
リビングのソファに隣り合って座る。
肩が触れるくらい近い。
城崎はマジックのキャップを開け、「どうします?」なんて聞いてくる。
「挨拶は毎日絶対する…とか?」
「ぷっ…(笑)なんでそんな会社みたいなんですか?」
「だって、思い付かないし…。」
「じゃあこうしましょう。おはよう、いってきます、ただいま、おやすみのキスは必ずする……、と。」
城崎はにこにこしながらホワイトボードに書き込んでいく。
「なっ…、は、恥ずかしいんだけど…。」
「でも先輩、チュー好きでしょ?」
「好きだけど…。」
「じゃあ決定。あと何にする?」
突然タメ口にするのやめてほしい…。
今めちゃくちゃキュンってしてしまった。
あー……、好き。
「城崎……」
「なんですか?」
「…………好き。」
「?!可愛いっ!!」
小声で伝えたけど、城崎はちゃんと聞き取って、嬉しそうに俺のことをぎゅうぎゅうと抱きしめる。
本当好きだなぁ、城崎のこと。
最近気持ちが溢れてヤバい。
「あ、じゃあさ…」
「うん?」
「……しないと思うけど、もし喧嘩してもちゃんと帰ってくる……とか?」
そう提案してみると、城崎は名案だ!と言わんばかりにキラキラした目をして、ホワイトボードに書き込んだ。
城崎と喧嘩…。
自分で言っておいて、あまり想像できない。
したとして、すぐどっちかが折れそうな気がするな。
「いいですね〜。あと一個くらい決めたいなぁ。」
「てか、同棲のルールって普通、家賃とか家事分担とかじゃねぇの?」
「家事は全部俺がするし。お金は…どうします?俺払ってもいいですけど。」
「は?!俺も払うに決まってんだろ!なんなら城崎が家事全部やってくれるなら、俺が8割くらい出してもいいくらいだろ。」
「それはダメです。じゃあ折半にしましょう?」
「俺の方が稼いでるけど?」
「浮いた分は先輩のご両親に使ってあげてください。」
城崎はお金に無頓着すぎるというか…。
俺にかけるお金惜しまなさすぎるだろ…。
将来が心配だ。
「そうだ、ルール。ラブラブなルールあと一つ欲しいです!」
「もう十分だろ。」
「ダメ。あ、そうだ。思ったことは素直に言う、とかどうですか?」
「……?」
「先輩、天邪鬼 というか、恥ずかしがり屋さんでしょ?さっきみたいに『好き』とか、あと寂しい時は寂しいって言って欲しいし、嫌なことは嫌って言ってほしい。」
「………わかった。善処する。」
「気持ちいい時もちゃんと言ってくださいね?♡」
「…っ、ば、バカ!」
城崎は最後のルールをホワイトボードに書き込んだ。
やべー…。
めちゃくちゃバカップルだ、これ。
「先輩、これからよろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
こうして俺と城崎の同棲生活がスタートした。
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