310 / 1069
第310話
会社に着いて朝礼。
その後、俺と城崎と涼真が部長に呼び出された。
「また先輩と出張かな?」
「そうだといいな。」
「本当おまえら仲良いなぁ。」
三人で話しながら部長の元へ向かう。
城崎は俺と出張だと信じてやまない様子だ。
「お、来たか。」
部長は横に並んだ俺たちに書類を手渡す。
「望月、柳津は名古屋に、城崎と私で大阪に出張だ。今回名古屋組は一泊二日、大阪組は三泊四日、詳細はそこに記載しているからきちんと目を通しておくように。くれぐれも体調管理には気をつけるんだぞ。」
「「「はい。」」」
俺と涼真か。
隣に立つ城崎は返事こそすれど、目が死んでいた。
部長は気づいてなさそうだけど。
「城崎は二回目の出張だからな。前よりも有名な企業だし、プレッシャーはあるかもしれないが、私が支えてやるからな。」
「部長……」
「なんだ?」
「早く契約付けたらその分早く帰れますか…?」
「んー、まぁそうだな。早く終わったら観光してもいいな。大阪はいいぞ〜。私が案内してやろう!はっはっは!」
部長……。
それ以上城崎を絶望させないでくれ…。
表情が部長にも分かるレベルに歪んできてるから……。
「じゃあ解散。出張の前準備優先で進めてもらって構わないからな。」
それぞれデスクに戻るため散り散りになろうとする中、城崎は俺の服の裾をギュッと掴む。
周りを確認して、城崎の歩む方向に付いていく。
到着したのはトイレ……。
「しろさ……、んっ!」
「無理……。先輩と四日も離れるなんて無理。」
「ちょっ、城崎…っ?」
「俺今泣きそうです…。はぁ…、キツイ。仕事できない。無理。」
個室に入るなりキスされて、泣き言を言われる。
相当ショックだったのか、雰囲気というか、表情や声でわかる。
頭を撫でてやると少しは落ち着いたのか、ゆっくり息を吸って、そして盛大なため息を吐いた。
「社員旅行の前に先輩不足で死にそう。」
「ま、毎日ビデオ通話しよう…?」
「三泊四日とか長すぎる…。先輩とだったら嬉しくて飛び上がってたのに……。」
「仕方ないって。上の采配 だし…。」
城崎は泣きそうな顔で、俺に何回もキスしてくる。
「一日目のおはようといってきます、最終日のただいまとおやすみを除いて12回キスできない…。先輩と三日間一緒に寝れない…。俺寝不足になっちゃうかも……。」
「今まで会えない日だってあったじゃん。そんなキスしてなかったし。」
「先輩ドライすぎる…。俺、もう先輩がいない生活なんて考えられない…。」
ちゃっかり数えてるし。
いや本当、つい最近まで別々に暮らしてたし、なんなら半年前までは付き合ってもなかったじゃん。
俺そんなにドライなのかな?
「とりあえず仕事戻ろう?みんな心配してるかも。」
「はい……。」
言いくるめてデスクに戻ると、涼真は察したようで苦笑いしていた。
ともだちにシェアしよう!