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第313話
城崎と別れ、涼真と待ち合わせている場所へ向かう。
あー……、明々後日まで城崎と会えないのか…。
城崎と離れて急に実感が湧いてきて、なんだか泣きそうになってしまう。
「あ、綾人〜!こっちこっち!」
鼻をすすると同時くらいに、涼真の元気な声が聞こえた。
今は涼真の明るさが唯一の救いかも…。
「おはよ。遅れてごめん。」
「いーよいーよ。どうせさきちゃんとギリギリまでイチャイチャしてたんだろ?」
「うん。」
「お。やけに素直だなぁ。」
涼真に揶揄 われながら移動する。
城崎は一本早い新幹線で大阪まで行ってしまったから、俺は涼真と駅弁を選びながらゆっくりとホームへ向かった。
「城崎すげーな。部長と大阪って。」
「うん…。」
「ま、俺らはいつも通り頑張ろうぜ。」
「そうだな。」
俺は名古屋担当みたいになってるけど、部長は城崎に大阪を任せたいのかな。
もしそうなら、俺と城崎は出張先被らなくなって、一緒に出張行くこともなくなるのだろうか。
どんどん悪い方向に想像してしまう。
「綾人〜、何買ったん?」
「牛タン弁当。涼真は?」
「俺は鰻重〜♪」
「美味そう。」
「食う?」
いつもみたいに"Yes"と答えそうになって、でもそこで止まった。
城崎、嫉妬しちゃうだろうなぁ、なんて思って。
それに、俺ももし城崎が他の人とそういうことしてたらムッとしちゃいそうだし。
「いいや。」
「え、なんで?」
「されたら嫌なことは俺もしない。」
「…………あー、ね。」
涼真は少し考えて、察したようだ。
乗る予定の新幹線がホームに止まり、指定席に座る。
涼真は嬉しそうに鰻重を開けて食べ始めた。
「バカップルも大変だな〜。」
「全然。俺が勝手にしてることだし。」
「そか。まぁ綾人がしんどくないならいいんだけどな。」
「ありがと。………あっ。」
スマホが光り、俺はスマホのロックを解除する。
やっぱり。城崎からだ。
メールを開くと、『静岡通り過ぎました。今日は富士が綺麗に見えましたよ。』と書いてあった。
「さきちゃんか?」
「えっ、あ、なんで分かったんだ?」
「ニヤけすぎ。さすがに分かる。」
涼真はケタケタと笑いながら、また鰻重を食べ始めた。
俺は城崎になんて返事しようかなぁ、なんて悩みながらスマホと睨めっこする。
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