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第314話
一緒に富士山見たかったなぁ…。
伊豆に行った時も見れたけど、何回でも一緒に見たい。
たくさん写真も撮ろうって約束したし、もっといろんなとこ行きたいな。
「何ずっとスマホ見てんの?」
「なんて返事しようかなーって。」
「とりあえずスタンプでも押しとけば?」
涼真は何やってんだと言わんばかりの顔で俺を見る。
そんなこと言われたってなぁ…。
「メールだからスタンプとかないし。」
「は?メール??なんで?」
「なんか特別感あってよくない?」
「マジか。」
何故か引かれてる。
涼真、素直すぎて顔に出てるよ…。
いいじゃんな、たまにはメールも。
まぁ最近の城崎とやりとりはいつもメールなんだけど…。
「これでよし…と。」
「できた?」
「うん。なぁ涼真、今日は富士が綺麗に見えるってさ。」
「へぇ〜。富士といえば城崎の写真、上手く撮れてたよなぁ。」
「涼真が選んだのは青の洞窟だけどな。」
涼真の誕生日会からの、写真対決。
涼真からすればいきなり追い出されて、意味わからなかったかもしれないけど。
よくよく考えたら、あれがきっかけで同棲まで辿り着いたんだよな。
「涼真、ありがとな。」
「何が?」
「おまえいなかったら、城崎と同棲できなかったかも。」
「あー、結局同棲始めたんだっけ?誕生日に。」
「うん。」
同棲を始めて数日後、涼真には誕生日プレゼントをもらったときにこっそり伝えた。
びっくりしてたし、よく遊びにきていた俺の家を売り払うことに残念がっていたのは記憶に新しい。
「あの対決で俺が負けたから、城崎が一週間仮同棲することになってさぁ。」
「ほ〜。そうだったんだ。」
「やっぱ恋人っていいな…。涼真は作んねーの?」
「出来ねぇんだわ、このバカ。」
「惚気 んな。」と頭を小突かれる。
冗談抜きに涼真には幸せになってほしいから、早くいい相手見つけてほしいな。
涼真も結構モテるんだけどな。
ちょっと抜けてるとこがあるから、彼女が怒ってるところはよく見る。
涼真のいいとこなんてたくさんあるから、紹介して涼真が気に入ったらすぐくっつくだろうけど。
「でも親友が幸せそうなのはいいよな。俺が彼女できて幸せになったら綾人も喜んでくれんのかなぁって考えたりする。」
「そりゃ嬉しいよ。いい人いないの?」
「いたら困ってねぇよ。」
「それもそうだな。」
涼真はそこまで焦ってなさそうだし、俺が気にしすぎることも変だろう。
いつかいい人が見つかった時、相談してくれるだろうか。
もう俺たちも30歳。
今から出会う相手は人生のパートナーになる可能性が高いだろうし、慎重に決めてほしいな…なんて親心のように思ってしまった。
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