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第315話
名古屋に着き、早速取引先に向かった。
予定通り営業をこなし、一旦ホテルへ向かう。
思ったよりも早く終わったので、昼寝する時間くらいはありそうだ。
夜は吉野さんとそのご友人の方々と親睦会をすることになっている。
名古屋の中小企業の社長さんたちが集まるまたとない機会だから、俺も涼真もかなり緊張してたりする。
「綾人、寝る?」
「ん〜……、寝よっかな。」
「ちょっと早めに店着いときたいし、1時間後にはホテル出るか。」
「うん。」
ビジネスホテルは涼真と隣同士で取っていて、約束の時間を決めてからそれぞれの部屋へ入る。
城崎からの返事は、城崎が大阪に着いた頃から途絶えてしまい、忙しいんだろうなと思いつつも連絡がこないか気になってスマホを手放せない。
涼真と離れて一人になると、余計に頭が城崎のことでいっぱいになる。
早く会いたい。
せめて声聞けたならぁ…。
でもこの時間なんて、向こうはきっと仕事の真っ只中だろうし…。
『調子はどう?こっちは結構順調だよ。今から吉野さんと、吉野さんのご友人と親睦会に行ってきます。城崎も頑張れよ。』
メールの本文を作って、締めの一文から何行も改行する。
見えなさそうなところまで改行して『城崎の声が聞きたい。』とこっそりと内容を書いた。
いつもメールの最後にこうやって甘えるような文章を添えているけど、城崎は気づいてなさそうだ。
俺の自己満。
というか恥ずかしいから気づいてほしくはないんだけど。
でもメールした日はすげぇ甘やかしてくれるから大好き。
え…、いや、気づかれてないよな?そのことについて言われたことないし…。
城崎のことだから、もし気づいたら絶対イジってくるもん。
急に不安になって今までのメールを見返しても、本文の内容への返事しかなくてホッと安心する。
「うわ、もうこんな時間。」
メールを見返している間に時間が経っていて、涼真との約束の時間まで30分を切った。
一眠りする暇はなさそうだ。
時間が余ったので鏡の前に座って、髪の毛を整えたり、髭を剃り直したりと身だしなみを整える。
吉野さんに会うのは、前に城崎と出張の時に会って以来だから4ヶ月ぶりだ。
今日も楽しみにしてますとメールが入っていた。
吉野さんのことだから、また高い店だったりして…。
なんてことを考えていたら、スマホがピカピカ光った。
画面を見ると、城崎からだ。
『時間がないので短文ですが。楽しんできてください。くれぐれも飲みすぎないように。終わったら連絡ください。』
多分いつもなら電話をくれるんだけど、相当忙しいんだろうな。
こんな時でも飲みすぎないようにって…。ふふっ。
俺だって前のことちゃんと反省してるもんね〜。
「綾人、準備できた〜?」
「あ、今行くー!」
いつのまにか約束の時間になっていたようで、俺は急いで部屋を出て、涼真と一緒に吉野さんとの待ち合わせ場所へ向かった。
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