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第316話

18時に吉野さんと合流し、店へ向かう。 連れてこられたのは、駅から10分程度歩いたところにある高級料亭だった。 「すご…。綺麗なところですね……。」 「いいだろう?ここの懐石料理が美味くてね。是非君たちにも食べてほしくて。」 「吉野さん、本当いい店ばっかり教えてくれますよね〜。高そ〜……。」 「お金は気にしなくていいよ。みんな社長なんだから、君らの分くらいもちろん御馳走するさ。」 「いやいや、そんな……」 涼真も数年前に吉野さんに紹介して会ったことがあるから、まるで孫みたいに甘えている。 甘えさせてくれる、が正しいか。 吉野さん、本当優しいからなぁ…。 「お、来た来た。」 「お〜、吉野くん。久しぶり。」 「「こ、こんばんは…!!」」 「この子らかい?紹介したいって言ってたの。」 「そうそう。とりあえず中入ろうか。」 吉野さんの友人がぞろぞろと中へ入っていく。 俺たちも続いて中に入った。 俺と涼真を囲むようにして座り、みんなが(こころよ)く話に迎えてくれた。 料理も美味しくてどんどん箸が進み、吉野さんたちはそれをみてどんどん注文する。 盛り上がってお酒に手を出してしまったのが最後。 俺は瞬く間に出来上がった。 「そんなよーけ飲むからや。」 「あーあー……、望月くん、大丈夫?」 「…ひゃい……。」 俺は部屋の隅で吉野さんに介抱されていた。 涼真は他の社長さんたちとワイワイ盛り上がっている。 俺もあれくらい飲めたらなぁ…。 「みんな望月くんたちのこと、気に入ってくれたみたいだね。」 「ほんとれすか…?」 「うん。……というか、望月くんお猪口(ちょこ)一杯しか飲んでないよね?あいつはたくさん飲んだからと言ってたけど、殆ど彼が開けた分で、望月くん全然飲んでないだろう。」 「…………」 「昔からだけど、本当弱いねぇ。日本酒はまだ早かったかな?」 その通り過ぎて返す言葉もない。 あー…、頭ガンガンする……。 「城崎に会いたい……。」 「ん?城崎くんって前の?」 「うん…。今おーさか行ってるの。俺とこっちくればいーのに……。」 「城崎くんのこと、好きなのかい?」 「うん、好きぃ〜。」 吉野さんの前なのに、おしゃべりな口が止まらない。 吉野さん、優しいから「はいはい」って聞いてくれてるけど、普通の人なら引くと思う。 取引先の相手が同性愛者なんて、切られてもおかしいくらいなのに。 「ふふ。彼、格好いいし、優しいもんね。望月くんが惚れちゃうわけだ。」 「れしょ〜?もっといいとこいっぱいあるんですよぉ?料理もできてぇ…、可愛くてぇ、あとえっちも……んむっ!」 「綾人!!」 調子に乗ってベラベラ話していたら、後ろから口を塞がれる。 振り返ると、涼真が青褪(あおざ)めた顔で俺を止めていた。

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