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第317話

「なぁに…?」 「何って……。お前惚気(のろけ)てる相手誰だと……。」 「いいんだよ、柳津くん。私ね、孫みたいに大事に思ってるんだよ、望月くんのこと。だから恋愛話聞くの、楽しいよ。」 「で、でも…。相手……、聞きました………?」 「聞いたよ。周りから反対されるだろうに、苦しい道を選んだんだね。でも(おおやけ)にできないからこそ、私や君みたいな身近な人が応援してやらなきゃ。」 「……………」 「そうじゃないと、誰がこの子たちを肯定してあげるんだい?君はこの子たちの恋愛を反対してるの?」 「してません。」 「即答できるなら大丈夫だね。いい友達を持ったね、望月くん。」 「………?」 涼真と吉野さんがなんか話してる…。 涼真は怖い顔してる。なんの話…? 眠くて内容が頭に入ってこない。 「今日は帰るかい?」 「はい……。すみません、吉野さん。」 「もう彼らも出来上がってるし、今日は楽しんでくれたみたいだよ。仕事の話はまた今度、改めて機会を用意させてもらうね。」 「ありがとうございます。」 「おーい、みんな。今日はお開きだ。」 吉野さんがそう言うと、みんな腰を上げて帰る準備を始める。 俺も涼真に肩を借りて、よろよろと立ち上がる。 「どこにホテル取ってるんだい?」 「あー、○○です。」 「じゃあそこまでタクシーを使うといい。これで足りるかな?」 「いや、そんな…!もらえないです…。」 「遠慮しないで。また今度、お土産話待ってるって、望月くんに伝言よろしくね。」 「吉野さぁん、また来ますねぇ〜。」 「うん、またね、望月くん。」 タクシーに押し込まれ、吉野さんが運転手に目的地とお金を渡して出発した。 俺はふわふわした頭で気持ちよく居眠りしていたが、隣に座る涼真がいまだに怖い顔していて不安になる。 「りょーま……?」 「綾人、おまえ……。話したのが吉野さんでよかったよ…。」 「…………?」 「軽々しく口にしていい恋愛じゃねぇんだよ、同性愛ってのは。これからもあいつと居たいなら、それくらい考えろ……。」 涼真の言葉は酔った俺でも分かるくらい重く心に響いた。 俺と城崎の恋愛はたまたま涼真や千紗、吉野さんが受け入れてくれただけで、本当は言いふらせないもので…。 公にしようものなら、俺と城崎は世間から白い目で見られるかもしれない。 「うん……。」 「ちょっとは目ぇ覚めたか?」 「あ〜、うん…。俺、吉野さんになんてこと………」 「あの人は綾人のこと大事にしてくれてるみたいだから、大丈夫だと思うよ。」 涼真は俺のために怒ってくれてるんだ。 俺、本当情けないな…。 周りに恵まれすぎてるだけで、そうじゃなかったら既に俺と城崎の関係って続けていられるものじゃなかったかもしれない。 「ごめん……。」 「まぁ、反省したなら良し。」 涼真は気まずくならないよう、笑って俺を許してくれた。

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