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第318話

ホテルに着いて部屋のロックを外す。 あと部屋に入って布団に寝転ぶだけなんだけど、想像以上に千鳥足で歩く俺を見て、涼真は部屋の中まで付き添ってくれた。 「ありがと。」 「うん。てか、おまえそのまま寝んの?せめてそこにある浴衣くらい着替えろよ。シワになるぞ。」 「ん〜……。」 「寝んなって……、うわ。」 涼真は俺のシャツのボタンを外して驚いていた。 というか、引いてた。 何故なら、俺の体には今朝城崎に付けられたキスマークがびっしりだから。 「おまえら……、まさか今朝まで?」 「出張決まってから毎日…?城崎のやつ、寂しがりで可愛いんだよなぁ。」 「可愛いとかのレベルじゃないんだけど。」 涼真は苦笑しながら俺に浴衣を着せた。 ベッドにごろんと横になると、スマホが着信を知らせる。 「あ、城崎だ〜。」 「ま、待て!今出んなっ!」 「もしもし〜?」 ビデオ通話を受けると、画面に城崎が映った。 今日離れてからずっと恋しかった。 画面越しに見える城崎に表情筋を緩めると、城崎も俺に優しく声をかける。 『先輩、お疲れ様でした。』 「へへ〜。城崎もお疲れ様ぁ…。」 『酔ってるの?飲み過ぎはダメってちゃんと忠告したのに。』 「そんな飲んれないよ〜。」 あー、好き。大好き。 ニヤニヤが止まんなくて、枕に顔を埋めたり、でも城崎の顔が見たくてすぐに顔を上げる。 『先輩が可愛いところ水を差すようで悪いんですけど、後ろの男、なんで先輩の部屋にいるんですかね?』 「え〜?」 『まさか酔い潰れた先輩を襲おうなんて…』 「ば、バカ!!そんなわけねーだろ!!」 『何もないならそこに正座して座ってください。』 「なんで何もしてねーのに正座なんだよ!」 こっそり部屋に戻ろうとしていた涼真はばっちりと城崎に視認されており、呆気なく捕まった。 涼真は渋々床に正座し、俺は城崎に言われるまま涼真にスマホを渡す。 『なんでいるんすか。』 「フラフラで倒れそうだったから。今帰ってきて、もう俺は部屋戻るとこだよ。」 『ふーん。それはそうと、先輩がお酒飲むの止めなかったんですね。』 「日本酒ちょこっと勝手に飲んで潰れたんだもん。俺だって他の人と話してたし、いちいち止められねぇよ。あと、吉野さんに言っちゃったよ、おまえと綾人が付き合ってるって。」 『はぁ?』 「綾人が言ったんだからな。まぁ吉野さん、応援してるって言ってたけど。綾人にはちゃんと忠告しといたけど、おまえからも言っとけよ。」 『…………』 「城崎と綾人のためなんだからな。じゃあ俺、部屋戻るから。」 『……ありがとうございました。』 最後は立場逆転して、城崎がお礼を言って二人の会話は終わった。 涼真は「じゃあまた明日。」と、部屋を出ていった。

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