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第321話
もう日付を越えそう。
待っていられるか聞かれたから何かあるのかと思って起きていたけど、城崎からの連絡はあれからない。
何だったんだろう?
寂しいから通話したまま寝たかったなぁ…。
酔いも完全に覚めてきてしまって、お酒の力に任せて寝ようかと、冷蔵庫からビールを取り出す。
タブを開けようとした瞬間、部屋のドアがドンドンっと勢いよくノックされた。
こんな時間に誰だ?涼真か?
不審に思ってドアスコープから外を見ると、まさかの人物に俺は驚いてドアを開けた。
「城崎?!」
「先輩…っ!!」
城崎は部屋に入って後ろ手にドアを閉め、息が止まりそうなくらい激しいキスをした。
なんで?どうして?
聞きたいことがあるはずなのに、今は城崎のキスを受け止めるのが精一杯で、首に手を回して必死にキスに応える。
城崎、汗かいてる。
もう夜は寒いのに、こんな薄着で走ってきてくれたのか?
「先輩に会いたくて、来ちゃいました。」
「………バカ。風邪ひくじゃん…。」
「そこ?ここは素直に嬉しいって言ってくれてもいいんですけどね〜。」
「…っ!…………嬉しい…よ…、めちゃくちゃ…」
ぎゅぅっと抱きしめると、城崎も力いっぱい抱きしめ返してくれた。
本物だ。妄想とかじゃなくて、城崎が居る。
「結局一日ももちませんでしたね。」
「ごめん……。」
「いや、俺も会いたくて会いたくて堪んなかったし?先輩が寂しいって言ったのが決め手になっただけで、割と理性と戦ってたとこありますよ。」
「まさか来るとは思わなかった……。」
感情がどんどん溢れてきて止まらない。
いろんな感情が溢れてくる中、一番多いのはもちろん幸せって気持ちなんだけど。
「でも、どうやって…?」
「ぎりぎり終電があったんで。先輩が泣いて寂しいなんて言うから、居ても立っても居られなくて、ホテル飛び出してきちゃいました。」
「明日の取引は…?」
「始発で行けば余裕です。あー、先輩の匂い…。たまんない……。」
俺の髪に顔を埋めてスンスン匂いを嗅ぐ城崎。
ほんと犬みたいだな…。
………って。
「だ、ダメ!!そういえば俺、まだ風呂入ってないから!臭いだろ!?」
「臭くないですけど。てか、そっかぁ。じゃあ一緒にお風呂入りましょ?俺も走って汗かいちゃったし。」
「ビジネスホテルの風呂の狭さ知ってる…?」
「狭ければ狭いほど燃えるじゃないですか。最近は引っ越ししてお風呂も少し余裕ありましたからね〜。」
「前の俺の家より狭い……、ッ!」
「一緒に入りますよね?」
"Yes"しか選択肢がないだろ、これ。
コクコクと首を縦に振ると、城崎は満足そうにお湯を溜めにバスルームへ向かった。
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