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第324話

翌朝5時半。 ヒヤッとした冷たい空気に目を覚ます。 「あ。起きちゃいました?」 「おはよ…う……?」 城崎がベッドから出たところだった。 時計を見て、まだ早くないかと疑問の顔を城崎に向けると、チュッとリップ音を立ててキスをされる。 「おはようございます。俺、始発で戻らないとダメなんで。起こすつもりはなかったんですけど…。」 「そっか…。」 今から大阪に戻って、シャワーとかしてから新しいスーツに着替えて営業だもんな…。 終電で来て始発で帰るなんて、本当しんどいことさせたなと内心反省する。 城崎はミネラルウォーターを飲んで、半分俺に渡した。 好意に甘えてそれを受け取り、喉を潤す。 間接キスでさえ、ちょっとドキドキしてしまう。 城崎は俺が飲んで空になったペットボトルをゴミ箱に捨て、昨日着てきたシャツに腕を通し、ボタンを止めていく。 「駅まで送る。」 「いや、いいですよ。先輩は仕事の時間までゆっくりしててください。」 城崎は優しく俺の申し出を断った。 もう少し城崎と居たいんだけどな…。 寂しくてシャツの裾を握ると、城崎はシャツを握る俺の手に触れた。 「先輩は今日東京に帰っちゃうから、さすがに明日は会えないですね…。」 「………うん。」 「明後日、早く帰れるように頑張ります。」 甘い声で諭すようにそう言われる。 なんか出発前と逆転しているような…。 俺、なんで平気でいられると思ってたんだろう。 いつのまにかこんなに城崎に依存していたらしい。 「分かってると思いますけど、俺だって寂しいんですからね?」 「………うん。」 「先輩に会えてパワーもらえたから。いっぱい大きい契約付けてきます。東京で待っててください。」 「うん。大好き、城崎。」 「俺も。愛してます、先輩。」 腕を首に絡めて、朝っぱらから濃厚なキスをする。 別れを惜しむように、酸欠になりそうなくらいのキス。 唇を離した時にはお互い息を切らして抱き合った。 「じゃあ…、そろそろ行きますね。」 「待って……。」 「……??」 「一個だけ…、つけたい。」 城崎のシャツのボタンを外し肌蹴させると、綺麗な鎖骨が現れた。 そこに唇を当て、吸い付いた。 思ったよりも綺麗にはできなかったけど、紅い印が残る。 「これ、消えるまでには絶対帰ってこいよ…。」 「はいっ!先輩、俺も。」 「んっ…」 城崎は俺の首元の、シャツを着て見えるか見えないか際どい所にキスマークをくっきり残した。 こんなの2日3日じゃ絶対消えない。 ふふって思わず笑うと、城崎もそんな俺を見て笑顔になった。 「やっと笑ってくれた。じゃあ、本当に行きますね。」 「俺も下まで行く。」 「ん。ありがとうございます。」 俺もスーツに着替えて、二人で部屋を出た。 誰もいない廊下をこっそり手を繋いで歩く。 エレベーターでフロントに降り、城崎はきちんとお金を払ってホテルから出て行った。

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