325 / 1069
第325話
城崎を見送って部屋に戻ると、ちょうど隣の部屋のドアが開いた。
「あれ?綾人?すげぇ早起きじゃん。」
「おはよう。涼真こそ早いじゃん。」
頭をぽりぽりかきながら大きな欠伸 をしている。
まだ6時過ぎなのに。
「綾人、寝れた?」
「うん。なんで?」
そう聞くと涼真は口籠もりながら、とても言いづらそうに言葉を切り出した。
「いやぁ……、隣がさ……、多分致 してて……。」
「え。」
「12時くらいだったと思うんだけどさ?音と声と、すげぇの。なんか最近ご無沙汰だったから、ちょっと変な気分になっちゃって。ぜーんぜん眠れなかった……。」
涼真はため息を吐きながら、とても凹 んでいた。
涼真……、本当にごめん。
それ絶対俺だ………。
マジで薄いんだな、ここの壁……。
「綾人は?あのあと城崎大丈夫だった?」
「へっ?!」
「いやほら、電話してたじゃん。酔ってたから覚えてない?」
あ…、そのことか……。
よかった。バレたのかと思った。
さすがに出張中に、別の出張先にいる恋人とビジホでセックスしてたなんて知ったら、親友である涼真にさえドン引きされるに決まっている。
「え、あー。うん。大丈夫。」
「酔いすぎて怒られてんじゃねぇかなって思ってたけど、平気ならよかった。」
涼真が本当に心配してくれてるのがわかるから、なんだかとても申し訳ない。
眠れない夜を過ごした涼真。
しかも眠れなかった理由は俺って……。
「ごめん……。」
「何が?」
「いや、なんか、いろいろ……。」
「昨日のこと?気にすんなよ。吉野さんもまた今度改めてって言ってたし!」
涼真の素直さというか、人を疑わない所に助けられたな…。
ていうか、吉野さん。
俺のあのベロベロになった姿を見てなお、また機会をくれるなんて優しすぎるだろ……。
同性愛者だってぶっちゃけた上に、迷惑までかけて…。
酒、マジで必要最低限にしなくちゃ。
周りに迷惑と心配しかかけてないじゃん、俺…。
「なぁ、綾人後で起こしに来てくんない?ギリギリまで寝ても良い?」
「あぁ、良いよ。」
「マジ?頼むわ。」
なんたって涼真が寝られなかった原因は俺にあるし…。
取引先との約束時間まではまだ余裕があったので、1時間前の9時頃まで涼真は爆睡し、準備してから2日目に臨 んだ。
ともだちにシェアしよう!