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第325話

城崎を見送って部屋に戻ると、ちょうど隣の部屋のドアが開いた。 「あれ?綾人?すげぇ早起きじゃん。」 「おはよう。涼真こそ早いじゃん。」 頭をぽりぽりかきながら大きな欠伸(あくび)をしている。 まだ6時過ぎなのに。 「綾人、寝れた?」 「うん。なんで?」 そう聞くと涼真は口籠もりながら、とても言いづらそうに言葉を切り出した。 「いやぁ……、隣がさ……、多分(いた)してて……。」 「え。」 「12時くらいだったと思うんだけどさ?音と声と、すげぇの。なんか最近ご無沙汰だったから、ちょっと変な気分になっちゃって。ぜーんぜん眠れなかった……。」 涼真はため息を吐きながら、とても(へこ)んでいた。 涼真……、本当にごめん。 それ絶対俺だ………。 マジで薄いんだな、ここの壁……。 「綾人は?あのあと城崎大丈夫だった?」 「へっ?!」 「いやほら、電話してたじゃん。酔ってたから覚えてない?」 あ…、そのことか……。 よかった。バレたのかと思った。 さすがに出張中に、別の出張先にいる恋人とビジホでセックスしてたなんて知ったら、親友である涼真にさえドン引きされるに決まっている。 「え、あー。うん。大丈夫。」 「酔いすぎて怒られてんじゃねぇかなって思ってたけど、平気ならよかった。」 涼真が本当に心配してくれてるのがわかるから、なんだかとても申し訳ない。 眠れない夜を過ごした涼真。 しかも眠れなかった理由は俺って……。 「ごめん……。」 「何が?」 「いや、なんか、いろいろ……。」 「昨日のこと?気にすんなよ。吉野さんもまた今度改めてって言ってたし!」 涼真の素直さというか、人を疑わない所に助けられたな…。 ていうか、吉野さん。 俺のあのベロベロになった姿を見てなお、また機会をくれるなんて優しすぎるだろ……。 同性愛者だってぶっちゃけた上に、迷惑までかけて…。 酒、マジで必要最低限にしなくちゃ。 周りに迷惑と心配しかかけてないじゃん、俺…。 「なぁ、綾人後で起こしに来てくんない?ギリギリまで寝ても良い?」 「あぁ、良いよ。」 「マジ?頼むわ。」 なんたって涼真が寝られなかった原因は俺にあるし…。 取引先との約束時間まではまだ余裕があったので、1時間前の9時頃まで涼真は爆睡し、準備してから2日目に(のぞ)んだ。

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