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第328話
「俺も我慢するから……、城崎も頑張って…?」
「はい…。」
「帰ったらいっぱいキスして欲しい…。」
「俺も。唇荒れちゃうくらいしちゃうかも。」
「それはやだ。」
画面越しに唇を合わせる。
感触はないけど、画面越しのキスでも気分は浮上するものだ。
嬉しさが抑えきれなくて顔に出てるって、自分でもわかるくらい表情筋が緩んでいる。
「あー、俺も先輩のパンツ嗅ぎたかったな〜。」
「…………嗅げばいいじゃん。」
「だってそのあと俺履いてるんですよ?さすがに先輩のでも自分が履いた後は嗅ぎたくないです。」
「まぁ、たしかに…。」
パンツ嗅ぐなんて変態だって思うのに、城崎に俺のを嗅ぎたいって言われて何故か嬉しかった。
マジで重症だろ、俺…。
「今度嗅いでいい?」
「はぁっ?!ば、バカじゃねぇの?!」
「ふっ…(笑)先輩、嬉しそうな顔してるんだけど。」
「ちょ、も、もう切るから!!」
「えー。ごめんなさい。もう意地悪しないから。」
もうやだ。
ビデオ通話、怖い。
城崎鋭すぎだろ。無理。俺の気持ちバレバレじゃん。
「先輩、今日付けた痕見せて?」
「ん?これ?」
急に城崎から話を振られて、シャツのボタンを外して首元を見せる。
そこには今朝城崎が付けた印がしっかりくっきり紅 く色付いていた。
城崎はそれを見て満足そうに笑う。
「なんか安心する。先輩は俺のなんだなぁって。」
「………ん。」
「見て。俺も先輩につけてもらった。」
「知ってるし。」
城崎は嬉々として俺が印をつけた鎖骨を見せつけてくる。
ぼんやりと虫刺されみたいについた下手くそなキスマーク。
こんなに嬉しそうに見せつけられると、征服欲というか支配欲というか、なんか感じたことない気持ちになった。
「城崎…」
「なんですか?」
「やっぱなんでもない。」
「えー。気になるじゃないですか。」
言いかけた言葉を一旦胸にしまう。
重すぎて引かれたらどうしようとか、どうしても考えてしまうから。
モジモジしてる俺を見て、城崎は優しく話しかける。
「せーんぱい?教えて?」
「………引かれるかも。」
「だから何回も言ってますけど、引かないし。引かないって分かってるでしょ?」
「……………」
「言葉にしなきゃ、わかんないこともありますよ?」
城崎はエスパーに見えて、本当は不安だってある。
前の旅行でそのことは分かったし、俺もできるだけ伝えるように努力はしてる。
でも、今ふと思ってしまったのは、ただの俺のわがままだから…。
「俺、一生城崎のこと独り占めしたい……かも…。」
俺の口からポロッと出たのは、重すぎる独占欲だった。
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