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第336話
透さんの……恋人……。
透さんってたしか、医者でスーパーイケメンの……。
「あ、夏月くん!あにまるずのお兄さんも!よかったぁ、見つかって。……って、え?!なんで泣いてるの?!」
「…………」
「えっ、あっ…!違うよ!?夏月くんとはそういう関係じゃないからね?!」
息を切らして走ってきた天使くんは俺の様子を見て状況を理解したのか、慌てて誤解を解こうとしている。
相変わらずすげぇかわいいな………。
じゃなくて、言うことあるだろ、俺。
「ごめん、城崎…。」
「はい。もう謝らなくていいですよ。俺も勘違いさせるようなことしてすみませんでした。」
「天使くんも、ごめんなさい。」
「え?天使くんって俺??いや、というか、俺の方こそごめんなさい!夏月くんの恋人って、もしかしなくてもお兄さんのことだよね…?」
天使くんは俺と城崎の顔を交互に見て確認する。
俺と城崎が頷くと花の咲いたような表情で笑った。
「二人とも好きだから、なんか嬉しい!」
「す、好きって…。俺、まだ一回しか…。」
「あにまるず好きな人に悪い人はいません!それにお兄さん、雰囲気でいい人ってわかるし!」
天使くん可愛すぎる…!
わなわなと震えていると、城崎は俺を背中から抱きしめ直して不思議そうに尋ねた。
「さっきから天使くんとか、あにまるずとか、二人ってどういう関係ですか?そもそも面識あったんですか?」
「あー、えっと、前俺が半休使ったじゃん…。ほら…、あの……」
「あー、はい。先輩がキスで勃っちゃった日ね。」
「ば、バカ!!」
周りに人がいるのに平然と言うから、思わず前に回された城崎の腕をつねる。
すると反抗するように俺の乳首を触ろうとしたから、ぴしゃんっと手を叩いた。
天使くんはそんな様子を見てクスクス笑っている。
「そ、それで、電車で会ったんだよ…。」
「ふーん。あにまるずっていうのは?」
「俺と天使くんが好きな癒し系アニメ。」
「へぇ〜。俺も今度見よ。」
「み、見なくていいから…。」
「先輩が好きなものは俺もちゃんと知っておきたいし。」
「…………っ」
もぉ〜……。
何でこいつは、こうも簡単に俺のキュンを稼ぐの?
俺が顔を真っ赤にしていると、天使くんがニコニコしながら城崎に話しかける。
「ほんっっとに好きなんだね。今までに見たことない夏月くんが見れた。」
「そりゃあ言葉にできないほど大好きですからね。」
「ふふっ!お兄さん顔赤い!」
「み、見ないで…。ていうか、俺帰るから…。誕生日プレゼント選び中でしょ……?」
浮気はただの誤解だったし、寒いし、束縛したいわけじゃないし、それに何より恥ずかしいし。
駅の方へ歩き出そうとすると、両腕を後ろから掴まれる。
「当たり前に帰さないですけど。」
「お兄さんも一緒に相談乗ってよ〜。」
世界一大好きな恋人と、世界一可愛い天使のような男の子に呼び止められて帰られるはずもなく、俺は二人の間に挟まる形で百貨店に入った。
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