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第337話
俺を真ん中に挟んで、左には城崎、右には天使くん。
天使くんは「寒い〜」なんて言いながら、俺の右腕に引っ付いている。
可愛い子は何しても可愛いらしい。
城崎は人目につかないように、こっそりと指を絡ませて恋人繋ぎしてる。
見つかったらどうするんだ、これ。
恥ずかしくて赤くなる顔を隠すために下を向いていると、俺より背の低い天使くんが覗き込むようにして俺に尋ねた。
「お兄さんは名前なんて言うの?」
「望月綾人です。」
「えぇ〜!可愛い名前!綾人さんって呼んでいい?」
か、可愛いって…。
城崎に言われると嬉しいけど、やっぱり男だからか城崎以外に言われてもそんなに嬉しくはないな…。
苦笑いしていると、城崎の俺を握る手に少し力が篭 った。
「ダメ。綾人さんは俺の呼び方だから。」
「ちょ、城崎っ…!」
「そっか〜。じゃあもっちーさんとか?」
「それなら許してあげます。」
結局城崎が決定権を持っていて、天使くんは俺のことを"もっちーさん"と呼ぶことになったらしい。
天使くんは嬉しそうにニコニコ笑っていた。
「ところで天使くんの名前は?」
「あ、申し遅れました。松島 圭 です!」
「じゃあ、圭くんって呼べばいいかな?」
「はい!それで!」
天使くん改め圭くんは「あっちあっち!」と百貨店の方を指差して、俺の腕を引いて歩き出す。
自己紹介も終わったところで、倉科さんのプレゼント選び再開らしい。
高そうなジュエリーショップに入っていく。
男単体ならともかく、3人一緒にとなるとなかなか人目についてしまうのだが、圭くんは全く気にしない様子で指輪を見つめている。
「ねぇ、これどうかなぁ?」
「指輪は透さんが買うんじゃないですか?」
「ん〜。ペアのはもうあるんだけどね。これ透に似合いそうだなぁって。」
たしかに圭くんの左の薬指にはキラキラと控えめに輝くシルバーリングがある。
さっきは焦ってちゃんと見れてなかったからな…。
って、んん?
「前会った時、指輪付けてたっけ?」
「あ〜、あの日はネックレスにしてたかも。今日は絶対ここに付けろって、透に朝から付けられちゃった。」
「絶対俺への牽制 じゃん。浮気なんてするわけないのに。ね、圭さん?」
「ねー?」
城崎は嫌味ったらしく俺の方を見る。
「わ、悪かったよ…。」
「まぁいいんですけど。俺は絶対浮気なんてしませんから、次からはちゃんと覚えててくださいね。」
「うん…。」
城崎は案外根に持つタイプらしい。
これから怒らせないようにしないと…。
「もっちーさんも透と会ったことあるよね?どう思う〜?」
「え、えっと…」
圭くんが指差しているのは、たしかに倉科さんに似合いそうなシンプルかつ洗練されたデザインで、少し太めなのが男性らしい印象を与えた。
「いいんじゃないかな。」と答えようとした瞬間、その指輪のそばに表示されている金額に倒れそうになる。
「待って……。金銭感覚どうなってる…?」
「やっぱり高いかなぁ…?でも透、普段から高いのばっかり付けてるから、妥協したら見劣りしそうで…。」
「あぁ………。」
そういえば倉科さん、やべぇ時計付けてたな。
医者の恋人ってのも大変なんだな…。
「圭さん、違うショップも見てから決めない?」
「そうだよ!そうしよ!ここだけじゃないんだし!」
「そっかぁ。うん、じゃあそうする〜」
城崎の提案で、俺たちは一度ジュエリーショップを出て、メンズアクセサリーなど揃う別の百貨店へ移動した。
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