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第338話

メンズ館へ行ってからは圭くんが大暴走だ。 あちらこちら目移りしながら、あれが欲しいこれが欲しいと目をキラキラさせている。 「これ!透に絶対似合う!」 「似合いそうだね。」 「あ、でもでも!こっちもいいかも!あ!俺、あれ欲しい〜!!」 子どもか…? いや、まぁ可愛いんだけど。 苦笑して城崎の方を見ると、城崎は驚いた様子だった。 「どうした?」 「いや…、普段はどちらかというと年上っぽいんですよね、圭さん。」 「え?あの子が?」 「先輩が年上だからかな?なんか今日はすごく無邪気。」 そうなんだ…。 普段からあんなふうに可愛いんだろうなーとしか思ってなかったな。 きっとこれが()の圭くんで、倉科さんの前ではいつも全力で甘えてるんだろうなぁ。 こんな可愛かったら、そりゃメロメロにもなっちゃうだろ。 「俺もあんなふうに可愛かったらな…。」 「何言ってるんですか。先輩は今のままで十分可愛いですから。俺の好みのままの先輩でいてください。」 「ちょ、こら…っ」 ぼそっと漏れた本音は城崎の耳にバッチリ届いていたようで、城崎は「変わっちゃダメ」と俺をぎゅうぎゅう抱きしめた。 人前だってのに…。本当、もう……。 嫌ではないけど…。 「あー。今日はえっちしたい。」 「ばっ…!……声抑えろ!」 「いい?」 「…………いい……けど…」 恥ずかしすぎる……。 穴があったら入りたい。 城崎は()で蛸のように赤くなって(うつむ)く俺の肩を寄せて、圭くんの後ろをついて行く。 城崎と歩いている途中、シルバーアクセサリーの置いてある店が目に入る。 ちょうど視界に入ったネックレス。 結構デザイン好みかも…。 「先輩、欲しいのあった?」 「え?!あ、いや…、大丈夫。」 「ほんと?」 「うん。あ、ほらほら!圭くんすげー先まで進んでんじゃん!行こ?」 ここダメだ。値段がヤバい。 簡単に買える額じゃなかったからすぐに顔をそらしたつもりだったんだけど、まさか城崎気づいてないよな? 城崎の顔を覗き見ると、眠そうに欠伸をしながら俺と目が合うなり「どうしました?」と笑っている。 気づいてなさそう? よかった…。 「なんでもない。あーあ、城崎が欠伸してる間に、圭くんあんなところまで進んじゃった。」 「えー。俺のせいですか?」 「うん。城崎のせい。」 くすくす笑っていると、城崎が俺の手を握りなおす。 いつもひんやりしている手が、俺の体温でほんのり温かい。 「先輩、あまり外で笑わないで…。」 「え?」 「他の人に見せたくないし……、その、俺が我慢できそうにないんで…。」 「っ…///」 指先から伝わってくる熱と緊張。 早く二人きりになりたくて、圭くんがプレゼントを選んでる時間がさっきよりも長く感じた。

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