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第341話

「先輩、大丈夫?」 「ん〜……」 キスをねだり続けた結果、15分ほどで俺が逆上(のぼ)せて倒れた。 城崎は何度もストップをかけてくれていたから、完全に俺のせい。 膝枕をしながら、ぱたぱたと手を扇いで風を送ってくれている。 「そのまま寝る?」 「ん〜……。ちょっと話したい。」 「何の話?」 「大事な話……。」 そう言うと、さっきまでほわほわした雰囲気を(かも)していた城崎の背筋がスッと伸びた。 俺もかなりクールダウンしたので、ちゃんと座って城崎に向き合う。 「今日のことなんだけど…。」 「はい。」 「傷付けてごめん。」 「………。」 「城崎が俺のこと大事に思ってくれてることは知ってるし、城崎がちゃんと俺に伝えてくれてるのもわかってる。」 「はい…。」 城崎は俺の話を聞いて相槌を打ってくれている。 若干不満げな顔をしている理由は、好きだと分かってるのに、何で浮気を疑ったかってことなんだろうな…。 「さっきも言ったんだけど、俺本当に自信なくて…。」 「……。」 「城崎が浮気するわけないって思ったから声掛けたんだけど、隣にいたのが圭くんで…。圭くん、本当に可愛いから、つい城崎とお似合いだなぁとか思っちゃって、………城崎の隣に立つべきなのは俺じゃないのかなって……」 思い出しただけで目尻からジワっと涙が溢れ出る。 本当に怖かった。 城崎が俺から離れていってしまうんじゃないかと。 ならいっそ、俺から離れた方が城崎のためなのかと。 そう思って、俺はあの場から逃げた。 「城崎のこと信じてても、自信がない…っ」 「…………」 「俺の問題だから…っ、城崎は悪くなくて…、ん…」 「もういいから。泣かないで、先輩…。」 「ん、んぅ……」 強い力で抱きしめられて、いつもより何倍も優しいキスが落ちてくる。 優しすぎて、余計に涙が溢れた。 「俺の隣が一番似合うのは綾人さんだけだから。」 「……っ」 「というか、寧ろ俺が綾人さんに見合ってるかの方が心配だけど…。先輩が自信なくても、城崎夏月は俺のものだってくらいの気持ちで隣を歩いてほしい…。っていうのが、本音。」 「…………」 「だけど、多分先輩のその自信のなさ、簡単に治るもんじゃないと思うからさ…。やっぱり俺が気をつけます。」 城崎は優しい笑顔で俺にそう言った。 嬉しい。 嬉しいけど、それは城崎の交友関係を希薄にしてしまいそうで申し訳なくなってしまいそうだ。 「俺は先輩さえいればいいから。」 「そんなの……」 「いいんです。これからは先輩の知ってる人だけにしか会わないようにします。それなら安心でしょ?」 「……………」 「俺なんて先輩が柳津さんと二人でいるだけで嫉妬するんですから。先輩のは可愛いもんでしょ?別れるなんて二度と考えないで…。」 「うん。………城崎、好き。」 「俺も。愛してます、先輩。」 少し狂気的な城崎の愛。 俺はそれすら心地良くて、城崎の寵愛を受けながら目を閉じた。

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