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第348話

10月も終わり、11月になった。 城崎におはようのキスをされて目を覚まし、寝ぼけ(まなこ)を擦りながらリビングへ向かう。 カレンダーを捲りながら、空気の冷たさに本格的に冬の寒さを感じ始めた。 「おはようございます、先輩。」 「ん。おはよ…。」 「まだ眠いですか?」 「ん〜……。」 よく朝が得意そうだと言われるが、実際全然得意じゃない。 特に城崎と同棲してからは、目覚ましもかけずに城崎に頼りっぱなしだ。 城崎が朝得意で本当に良かったと心から思う。 新聞を読みながら、城崎の()れた珈琲を飲んで朝食を待つ。 「そういえば、そろそろ社員旅行の準備しないとですね。」 「あー、そういえばそうかぁ…。」 「先輩の机、沖縄の雑誌ばっかりですけど行きたいとこ決まりました?」 「うん。まぁ、大体?」 城崎に行き先を先に教えてもらってから、俺は沖縄の旅行雑誌を買い漁って情報収集した。 あまり使わない俺の部屋の机の上は、今は雑誌で散らかっている。 カップルで行くと盛り上がるスポットとか、夕焼けが綺麗なスポットとか、あとは普通にご飯が美味しいところをいくつかピックアップ。 あとはダイビングと海と…、水族館は外せないな。 「先輩、付箋貼ってるとこ全部はさすがに無理ですよ?」 「……………やっぱり?」 「俺が組みましょうか?」 一人で組んだ盛りだくさんのスケジュールは、一つ一つの場所を最低限で見たとしても足りないくらいだ。 プランを組むのがうまい城崎に一任するのが一番いいと思うけど…。 「………一緒に決めたい…かも……。」 「もちろんですよ。でももうすぐ時間だから、帰ったらゆっくり決めましょう。」 「うん。」 城崎は元より俺と二人でプランを組むつもりだったらしく、すんなりと俺の提案を受け入れた。 ちょうど朝食ができたようで、目の前に綺麗に盛り付けられた皿が並べられる。 トーストに目玉焼き、ウインナー、サラダ。 いつもながらしっかりとした朝食を平らげて、スーツを着て鏡の前で身なりを整える。 「首の後ろの痕どうすっかなぁ……。」 「大きめの絆創膏、貼っておきますか?」 「恥ずかしいけど、そうするしかないよな…。」 見えない場所でうまく貼れず、城崎に絆創膏を渡す。 城崎は紅く色付いた俺の(うなじ)にキスをしてから、絆創膏を綺麗に貼った。 「完全に事後ですね。」 「……だな。」 「むしろ外してた方がバレないんじゃないですか?」 「でもキスマークとかじゃなくて歯形だからなぁ…。」 キスマークくらいなら絆創膏を貼らない方がマシだったかもしれないが、くっきりと残った歯形を隠さないわけにもいかず、結局絆創膏を貼ったまま出勤することにした。 「いってきます。」 「んっ…、んぅ…」 今日は城崎から。 いってきますのキスは軽めにとあれほど言ったのに、今日も濃厚な深いキス。 最後に俺の唇を舐めて、満足げに離れていった。

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