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第351話

家に帰り、ただいまのキスをする。 飯を済ませて風呂に入ってから、リビングのソファでくつろいでいると、城崎が後ろから俺の首に手を回した。 「まさか先輩から言ってくれると思いませんでした…。」 「いや、もう既に城崎が言ってたじゃん。」 「うぅ〜………、嬉しい………。」 「…………」 やっぱり城崎にとっては嬉しいんだ、こういうの。 いや、俺も嬉しくないわけじゃないし、城崎と付き合ってることが恥ずかしいわけではない。 ただ何回も言うが、後ろ指さされて城崎が生きづらくなるのが嫌なだけ。 好きだからこそ、こいつの人生ごと大切にしたい。 守りたい。 「城崎、シよ?」 無性に城崎で満たされたくなって、上目遣いに誘ってみる。 毎日こんなに触れ合いたいくらい大好きだから。 抱きしめあったら、お互いの思いもなんだか共有できそうな気がして。 「えっ…、でもここ最近連日だし……、明日仕事だし…」 「ダメか?」 「ダメなわけないです…っ!」 「うわっ…!ははっ!」 勢いよく押し倒してくる城崎に、思わず笑ってしまう。 本当、犬みてぇ。 なんて思っていたら、いきなり大人なキスを仕掛けてくる。 「んっ、ぁ……はぁっ…」 「あ、そういえば先輩」 「ん…、な、なに…?」 「噂されてましたよ、この絆創膏。」 「嘘?!」 城崎は俺の頸を撫でて、絆創膏の上から何度もキスを繰り返す。 噂されてたって本当かよ…? 俺は何も言われなかったんだけど…。 「みんな察して先輩には聞かなかったんじゃないですか?こんなに目立ちますもんね?」 「だ、だって…」 「俺は外した方がいいんじゃないかって言いましたよ?」 「ていうか、元はこんなとこに歯形付けたお前が悪いだろ…っ!」 「見せつけたくて付けてますからねぇ…。」 「んっ!…こ、こら!」 首筋にも吸いつこうとしてきたので、顔を離して阻止する。 プクッと頬を膨らましていじけたふりをするが、可愛いけどそれとこれとは別。 「いいじゃん、付けても。」 「ダメ。営業マンなんだぞ、俺らは。」 「ん〜、ケチ。専業主夫に転職しませんか?」 「しない。」 「うぅ〜〜………。」 「他のとこならいっぱい付けていいから。」 「先輩……っ、好き!」 服を捲って肌を見せると、城崎は堪らない顔をして俺の肌にたくさんの紅い華を咲かせた。 あまりにも強く吸い付くから、社員旅行までに消えるかなとか呟くと、俺の裸を誰にも見せる気はないからと社員旅行までの数週間、毎日のようにキスマークを付けてきたのは城崎らしいと言わざるを得なかった。

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