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第362話

時間通り帰ってきた涼真は、真っ赤な俺と、上裸の城崎を見て苦笑い。 城崎はムスッとした顔をしている。 「別にピッタリ1時間で帰ってこなくてよかったと思うんですけど。」 「俺も休ませろよ、部屋で。」 「ふーん。柳津さんは体力ないんですね〜。」 「嫌味ったらしいな……。てか、換気していい?」 涼真が言いづらそうに俺に尋ねる。 に、匂いヤバい…?! 俺も城崎もずっとこの部屋にいて鼻が慣れてしまったから、あまり感じなかった。 うわ、まじか。まじかぁ……。 「わ、悪い…っ!あ、えっと…」 「いいよ、綾人。俺がするから。」 「でも…っ、うわぁ?!」 慌ててベッドから降りようとすると、城崎に後ろから腕を引かれて胸の中に収まる。 見上げると、城崎はおもしろくなさそうに口を尖らせていた。 「いいじゃないですか。柳津さんがやってくれるって言ってんだから。」 「あのなぁ……。いいんだけど、せめていろいろ隠す努力をしろよ…。」 「1時間しかないからこっちはギリギリだったんですよ。いつもはちゃんと換気も後処理もしますから。」 「さも俺が悪いみたいな言い方をするな。」 こいつらは相性がいいんだか悪いんだか…。 本当、1時間くれただけでも感謝しなきゃいけないはずなんだけどな……。 「涼真、ごめんな。」 「いや、いいよ。あ、そうそう。今回綾人一緒に行けなかったからいろいろ買ってきたんだけど、いる?」 「え、いる。なになに?」 城崎の腕から抜け出し、荷物をごそごそいじる涼真のもとへ向かう。 鞄から何品(なんしな)瓶詰(びんづ)めやお菓子を取り出した。 ご飯のお供に紅芋タルト、ちんすこう。 定番なお菓子から、お土産ではあまり見ない瓶詰めまでたくさんだ。 「美味そう!ありがとう〜!」 「そういえば、下のバイキング21時までならいつでも行っていいらしいぞ。ソーキそばとかサーターアンダギーもあるって聞いた。」 「え、行く。早く行こ。」 「あと大浴場すげぇらしい。さすがリゾートホテルって感じで超豪華なんだってさ!」 「行きたい!!」 「だーめ。」 バイキングのあとそのまま大浴場…なんて思ったのも束の間。 城崎に捕まった。 「行きたい………。」 「ダメ。」 「だって超豪華って……。」 「見られてもいいの?」 「…っ!」 城崎は耳元で囁くように俺に尋ねる。 そうだった。 身体中には社員旅行に向けてびっしりと付けられたキスマークの数々。 それについ最近、また下の毛を剃られたんだった。 思い出して顔を熱くすると、城崎は満足げに笑う。 「てことで、大浴場は柳津さんお一人でどうぞ。」 「…………。お前も大変だな、綾人。」 「まぁ……、それほどでも…………。」 「適当に誰か見つけて一緒に入るわ。まぁ一人でもいいけど。とりあえず飯行かね?」 涼真の大人な対応に助けられ、3人でバイキングがある2階の大広間へと向かった。

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